──フリーターというのは、身分や働き方のことではなくて、応援するメッセージのキーワードとして使い始めたということですか。

 そうです。例えば、自分は作家になりたい。でも作家なんてすぐなれるわけじゃないし、だったらいろいろ経験を積むほうがいいし、生活もあるからアルバイトをやりましょうよと。世の中にクリエイターという職種がありますが、それになりたい人を応援するのが一番の目的だったのです。

 外食産業の勃興期だったこともあり、その成長スピードに合わせるようにアルバイトが増えていました。1店舗あたりの社員が2割、アルバイトが8割という構成で、アルバイトのうち3割がパートの女性でした。そうなると、なかなか学生アルバイトだけでは全体の8割をまとめきれない。彼らをまとめる“上長”の位置付けとしてフリーターがいました。アルバイトのリーダーだったんですね。

 同時に、フリーターを題材にした映画化の話が進んでおり、私もプロデューサーとして参加しました。タイトルが「フリーター」に決まり、87年に東宝の映画館で公開されました。映画自体はちっともヒットしなかったのですが、全国の映画館で3ヵ月くらいずっと宣伝されているわけで、「フリーター」という言葉が全国区になったのは、映画の効果が大きかったと思います。

フリーターの意味が変わったのは
バブルが弾けた91年ごろ

──いつの間にか、フリーターが「正社員になれない人」「就職できない人」という意味に変容していったと思います。いつ頃から道下さんが本来意図したフリーターの意味とは乖離していったと思いますか。

 正直に言えば、わからないですね。象徴的だったのは、やはりバブルが弾けた91年ごろではないでしょうか。

 以前は、女性の自己紹介として「家事手伝い」という言い方がありました。女性なら花嫁修行としてそう名乗れたけれど、男性はそういうわけにはいかない。ちょっと家を手伝っていますというのはピンとこない。そこに、フリーターという言葉がぴったりきたのかもしれません。単なる学生アルバイトではなくて、目的のあるアルバイトなのでフリーターをしている、と。