アジアの発展から取り残されたミャンマーが変貌している。軍事政権が「国民的和解」へと舵を切り、アウンサンスーチーさんも応じた。「民主化路線はどこまで本物か」という疑いの目もあるが、軍籍を離脱したテイン・セイン大統領は本気のようだ。
軍政を温存しながら
「民主主義」の装いをまとう
テイン・セインは軍序列のナンバー4から政治の舞台に転じた。守旧派が根強い軍の既得権を剥奪する改革をどこまでやり抜けるのか。軍の巻き返しで振り出しに戻った改革は以前にもあった。テイン・セインに、ソ連の共産党独裁に終止符を打ち、失脚したゴルバチョフのイメージが重なる。
社会の「開花期」には様々な勢力が拮抗する。日本に必要なのは「本物か」を探ることではない。逆流しないよう改革勢力を側面支援することである。
昨年発足した議会は、軍人が無選挙で定数の4分の1占め、残りが選挙で選ばれる。憲法改正は4分の3が必要で、民選議員がこの制度を変えることはまず不可能だ。民政移管というが、非常時には軍が実権を握るようになっている。軍政を温存しながら、選挙・議会という「民主主義」の装いをまとった制度である。
それでも議会が発足し、議場で国政が話し合われるのは画期的で、「開花」へ大きな前進である。4月1日には補欠選挙があり、スーチーさん率いる国民民主連盟(NLD)から多数の当選者が出るだろう。公正な選挙ができるか、国際社会は注目している。選挙が問題なく行われれば、米国による経済制裁は緩和され、外国からの支援に弾みがつくだろう。