大手住宅メーカー、積水ハウスが絶好調だ。だが、昨年の不動産詐欺被害と、それを機に起きた名物経営者の事実上の解任劇が、業績の先行きに不透明感をもたらしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)
「責任は感じている」──。大手住宅メーカー、積水ハウスの2017年度(18年1月期)決算が先月、発表された。阿部俊則会長は、昨年に起きた地面師(他人の土地の所有者に成り済まして不動産詐欺を働くやから)による詐欺被害事件に、公の場で初めてそう口を開いた。
事件は昨年4月、積水ハウスがマンション用地として東京都品川区の土地を70億円で売買契約したものの、法務局から所有権移転の登記を拒否されたことで発覚した。特筆すべきはその被害額。数千万から数億円レベルの被害額が多いとされる地面師の詐欺事件において、積水ハウスは昨年7月の中間決算で、それを1桁も2桁も上回る55億円超の特別損失の計上に追い込まれた。
しかし、積水ハウスの足元の業績は、そんな不測の事態をものともしないほど絶好調だ(図(1))。
17年度決算では、売上高は2兆1593億円、営業利益は1955億円、そして純利益も1332億円と、いずれも当初計画を上回る過去最高をたたき出した。18年度も増収増益を見込み、とりわけ営業利益では2000億円の大台超えを目指す。
主なけん引役は、17年度の営業利益で前期比52.6ポイント増の「分譲住宅事業」や同310.4ポイント増の「マンション事業」。そして、同18.2ポイント増の「国際事業」だ(図(2))。マンション事業では「グランドメゾン新梅田タワー」の完売や「グランドメゾン御園座タワー」の引き渡しなどが貢献。また売上高で同68.4ポイント増と急伸した国際事業では、昨年3月に約533億円を投じて買収した米住宅会社、ウッドサイド・ホームズの収益に加え、米国西海岸での賃貸開発物件の売却が業績を押し上げた。
巨額損失もどこ吹く風。だが、今後も盤石というには懸念がある。それは主力の「戸建住宅事業」だ。
「今年は、戸建て“復活”の年にする」。決算説明会の席上、仲井嘉浩社長が18年度をそう位置付けたように、本業である戸建住宅事業が苦戦を強いられて久しい。