女性上司に振り回される
外資系トイレタリーメーカーブランドマネージャーDさん(38歳)

香港から赴任した
凄腕女性マネージャー

 Dさんが勤めるトイレタリーメーカーは外資系といえども、今まではほとんどが日本人で占められていた。月に1回行う全国の営業所を結んだテレビ会議ももちろん日本語。工場も国内生産。

 自分の会社を外資系だと自覚するのは、会計年度が1月からはじまるカレンダーイヤーを採用していること、クリスマス休暇があること、そして予算のレポートを香港にあるアジアパシフィック・オフィスに英訳してメールする時くらいだった。

 しかし、3ヵ月前に、Dさんの上司が外国人女性に変わったことでDさんの日常は一変した。新卒で入社して以来女性の上司は初めてだ。

 女性向けヘアケアブランドを立ち上げるために本国からきたやり手の敏腕ブランドマネージャーと聞いている。競争の激しいインドや中国でヘアケア製品の上市を成功させた実績をかわれ、洗剤などが売り上げの大半を占める日本でヘアケアという新しい事業の柱を作るためにやってきたらしい。

 新しい上司は小柄で、多くの欧米人女性と同じくほぼノーメーク。そばかすにショートカット。普段のファッションはパンツにカーディガン。

 一見地味な印象ではあるが、会議が始まるとその小さな身体が大きく見えるから不思議だった。目力(めぢから)も強い。Dさんは早口の英語で表情豊かに話す女性上司が何を言っているのか、いつも神経を集中させていた。

「このブランドを日本のナンバーワンにする。ゴールはこれだけです」。会議の終わりは必ずこう締める。繰り返すその言葉だけはやっと聞き取れるようになっていた。