家庭でも職場でも気の強い女性に囲まれ肩身の狭い
調剤薬局薬剤師Yさん(35歳)

多忙な調剤薬局での日々

 Yさんの仕事は調剤薬局の店長兼管理薬剤師だ。Yさんの薬局は朝早くから閉店時間の午後8時過ぎまで、処方箋を持ってくる患者さんで常に混んでいた。ペイン治療と整形外科が有名な病院が目の前にあり、遠くから頸椎や腰椎の痛みがあるお年寄りが、家族に付き添われて全国からやってくる。

 Yさんの勤務する薬局には、Yさん以外の6人の薬剤師は、すべて女性。そのうち社員は2名。あとはパートさんだ。Yさんは男性1人ということもあり、女性に囲まれていつも肩身が狭い。母親と同じ世代のパートの薬剤師さんは、経験豊富で頼りになるが、口も達者だ。「あの子は手がのろいね」とか「あの先生の処方箋は読みにくい」とか何かにつけて文句を言ってくる。

 特定のスタッフと飲みに行ったりすると、「Yさんはあの人ばかり可愛がる」「若い子だけと話す」と陰口をたたかれる。挙句の果てに「付き合っているかも」なんていう噂がたちやすい。それなので、送別会など、特別な飲み会の日以外は真っ直ぐ帰宅して、すべての女性スタッフと距離をおくようにしている。

 以前、エリアマネージャーから呼び出されて、「店長が美人の新人の薬剤師をえこひいきばかりする」とパートの薬剤師からクレームが来たと注意されたときは、腹が立つというよりは力が抜けた。

 毎日、パートさんに気を遣い、なるべく波風を立てないように過ごしていると、明るく快活だった自分の性格が、年々変化している気がする。腹が立つことがあっても、スタッフにはなるべく優しい声で話しかけるようにしている。鏡の前で笑顔の訓練をしている自分が情けなくて、胃が痛むYさんだった。