あるいは、今の仕事と違うことをしてみたいと思って転職するには大きなリスクが伴うが、異動によって、最小限のリスクで、他分野で自分の力を試すことができる。

 また、中小企業ではどんなに反りの合わない上司や同僚であろうと、同じ部署に一生一緒にいるということもあり得るし、異動でその人と関係がなくなるということはないが、大企業であれば、3年も我慢すれば、上司や周囲は変わるものである。

【メリット5】
大企業の管理職や役員という立場が、
「人間的に成長」させてくれる

 大企業という影響範囲の大きさからくる、視野の拡大や思考の深み、そしてそれによる人間的な成長も大きなメリットだ。

 地位は人を育てる。一般的に大企業の部長や課長にとって、自社商品やサービスが関係するステークホルダーの範囲や地域はとても広い。その地位にあると、単なる自分の身の振り方や自社の損得計算にとどまらず、あるアクションについての、歴史的、文化的考察、未来への影響、人々の生活への配慮、社員の人生などを考えざるを得ないものだ。

 自分の会社や商品、自分の決断が与える影響力を知ると、それを「背負おう」という人は思慮深くなる。たくさんの選択肢があり、それを社内政治や自身の進退や、目先の業績だけを勘案して単に処理するか、それとも「背負うか」。背負う人には、必ずしも出世とイコールではないが、人間的な成長がある。私のような一匹おおかみはときおり、それに対してある種のジェラシーすら覚える。

 大企業に入ったばかりで、地位が低いときは、意外に大したことがないという人はたくさんいる。しかし、地位が上がるにつれ、影響範囲についてどうしたらいいかを真面目に考える機会が増え、背負うものが増え、覚悟ができていく。

 優秀な人に教えを乞い、一緒に仕事をする相手も役員、コンサル、弁護士など一流の人になる。その人たちから良い影響を受け、良いものを吸収し、思考に深みを加え、部長以上になると加速度的に立派になる人、いつの間にかすごい人になっているという例を数多く見てきた。そうした人で尊敬できる人がたくさんいる。こういう形の成長や成熟は、大企業という環境の中でなければなかなか実現できないものだ。