このところ、国際商品相場が地政学的な要因によって変動している。目立つところでは、アルミニウムが3月末比で一時36%高、ニッケルが同25%高、パラジウムが同11%高などとなっている。

 4月6日には、米国政府が、2016年の米大統領選挙への介入疑惑などを理由に、ロシアのプーチン大統領に近い実業家、企業、政府高官を対象とした追加制裁を発表した。この中には、アルミニウム生産量世界2位のUCルサール社と同社関係者が含まれていた。

 また、ルサールが株式の28%を保有するニッケル生産量世界2位のノリリスク・ニッケルにも制裁の影響が及ぶとの懸念が強まった。ノリリスクではパラジウムやプラチナの鉱山も操業している。

 原油(ブレント)は3月末に比べて6%高と上記金属よりも緩やかな動きだが、1バレル当たり74ドルと14年11月以来の高値にある。米中の貿易戦争懸念の緩和やサウジアラビアが一段の原油高を志向しているとの報道に加えて、シリア情勢やイラン制裁問題への懸念が足元の相場を支えている。

 シリアでは、4月7日に首都ダマスカス近郊の東グータ地区への空爆で化学兵器が使用されたとの見方が強まった。米国はアサド政権による使用と断定し、14日には英仏と共にアサド政権の化学兵器施設に対するミサイル攻撃を行った。

 原油市場では、9日ごろから米欧の対シリア攻撃の可能性が徐々に織り込まれていった。実際の米欧の攻撃は、市場が警戒した規模にはならず、その後、原油相場はやや下落したとはいえ、押し上げられた状態が続いている。

 シリア自体は小規模な産油国だが、アサド政権を支援するロシアやイランは大産油国である。米ロ関係が一段と悪化し、対ロシア制裁が強化されて原油も対象になるような事態になれば、大規模な供給障害に至るとの懸念があり、原油相場も動揺したといえる。

 イランについては、5月12日に「制裁解除」が継続されるかどうかが焦点となっている。

 15年に米英仏独中ロの6カ国とイランとの間で同国の核問題に関して合意したが、トランプ米大統領は「悪い取引」だとして離脱を示唆してきた。

 米政府は、合意に基づく対イラン制裁解除の延長の是非を120日ごとに議会に報告するが、トランプ氏は1月12日の延長を最後だとし、英仏独に対して、制裁再開の要件に、長距離弾道ミサイルの開発などを含めて再交渉すべきだと要求していたが、事態はうまく運んでいない。

 核合意から米国が離脱し、対イラン制裁を再開する動きがあれば、イラン産原油の供給減が連想され、原油高につながるリスクがある。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)