昨年末、シリア内戦でプーチンが事実上の「勝利宣言」をした。プーチンは中東の覇権を米国から奪ったように見えたが、ここにきて米国が反撃に転じるなど、情勢は混沌としてきた。(国際関係アナリスト 北野幸伯)

ロシア人傭兵を米軍が殺害
混沌としてきたシリア情勢

シリアのアサド大統領を守りきったプーチンは、昨年末に「勝利宣言」をし、米国に代わって「中東の覇者」になったかに見えた。しかし、あれからたった2ヵ月で、状況は再び混沌としてきた 写真:代表撮影/AP/AFLO

 2011年から内戦が続くシリア。ロシア・イランが支援する「アサド大統領派」と、欧米・サウジアラビア・トルコなどが支援する「反アサド派」、そして「イスラム国」(IS)が、三つ巴の死闘を繰り広げていた。

 ロシアは15年9月、シリア空爆を開始。「反アサド派」と「IS」を容赦なく攻撃することで、大いにアサドを助けた。結果、アサドは、ほぼ全土を掌握するまでに勢力を回復。17年12月11日、プーチンは、事実上の「勝利宣言」をし、ロシア軍に撤退を命じた。

 アサドは生き残り、プーチンは中東の覇権を米国から奪ったように見えた。しかし、ここに来て、米国が反撃に転じている。

 先日、シリアにおける米ロ関係について、ショッキングなニュースが飛び込んできた。米軍の空爆で、ロシアの傭兵80~100人が死んだというのだ(ブルームバーグ2月20日付は、「200人強死亡」と報じた)。

 毎日新聞2月19日付を引用してみよう。(太線筆者、以下同じ)

<<シリア>米主導空爆で「ロシア雇い兵300人死傷」報道
毎日新聞 2/19(月) 10:37配信
【モスクワ杉尾直哉】シリア東部デリゾール県クルシャムで今月7日、米軍主導の有志国連合がアサド政権を支援する武装勢力を空爆した事件で、ロシアの民間軍事会社の雇い兵300人が死傷していたとロイター通信が報じた。死者は80人から100人に達したという。>

 これだけでは、意味が分からない。何が起こったのか、もう少し詳しく見てみよう。

 <米国防総省は7日の空爆は、米国が支援するクルド人主体の武装勢力「シリア民主軍」(SDF)がアサド政権側の武装勢力に攻撃され反撃したと説明した。>(同上)

 米国が支援する「シリア民主軍」(SDF)が、アサド政府軍に攻撃された。それで、米軍がアサド政府軍に反撃したところ、そこにロシア人傭兵がいたというのだ。米国防総省は、「ロシア人がいることは知らなかった」としている。