日本の家電メーカー3社が大幅な赤字を出していることが、アメリカで大きく報道されている。そしてこのニュースはアップルの好調な業績と対照的に報道されることが多い。パナソニック、シャープ、ソニー3社の赤字額を合計すると、ほぼアップルの黒字額に匹敵するとニューヨーク・タイムズは報じた。日本の家電には未来がないと評するものもある。
さらに最近クローズアップされたのが、アップルの新型iPad用高精細ディスプレイパネルの調達問題である。昨年12月にアップルは新型ディスプレイをシャープ、サムスン(韓国)、LG(韓国)の三社に分けて発注した。アップルとしては、特許問題でアップルを訴えているサムスンには発注したくなかったといわれる。だが蓋を開けてみたら、3月16日発売の新型iPadの納入期限に間に合ったのはサムスンだけであった。
ソニーにしろ、パナソニックにしろ、シャープにしろ、つい最近まで完成品を開発・製造して世界市場で販売する大手家電メーカーであった。ところがいつの間にか、部品メーカーになってしまった。今回のパネル事件でシャープは部品メーカーとしてもサムスンに劣後する二流メーカーであることが世界に知れてしまった。
日本企業が国際競争力を発揮できたのは、国内での垂直統合を武器に高品質の製品を作る生産体制に負うところが大きい。垂直統合とは、大手家電メーカーが国内の下請け企業を使って生産する体制を指す。できた製品はMade in Japanとして海外で高い評価を得た。しかし、90年代に入って、低賃金国の生産力の向上と予想外の円高によって、この構造は競争力を失ってしまう。
米国企業は80年代に日本企業との競争に敗れ、国内産業が空洞化した。だが米国は物作りに固執しなかった。製品企画力だけを国内に温存して、物作りを国際分業にしたのである。海外の低賃金国に生産委託することで、コスト低減を図れるようになった。
これを人間の身体に例えれば、「頭脳だけを国内に残して、手足は国外に移した」ことになる。こうした企業をファブレス(Fabless)企業と呼ぶ。アップルもその一社で、生産はすべて台湾企業Foxconnに委託し、Foxconnが中国で生産している。