「を」から「が」にするだけでも印象は大きく変わる
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

たった1文字でも印象はガラッと変わる
文章における細かな表現の選び方は、思った以上に重要です。
たとえば、プレゼン、レポート、講演、セミナー、勉強会などの資料でタイトルを考えるとき。たった1文字の違いで、読み手に与える印象が大きく変えることがあります。
最初にクイズです。
==================
【クイズ】
AとB、どっちが読まれるタイトルでしょうか?
A 肌の悩みを解決する「スキンケア習慣」のつくり方
B 肌の悩みが解決する「スキンケア習慣」のつくり方
==================
間違い探しみたいになってしまいましたが、どこが違うかわかりましたか?
違いは助詞です。Aは「肌の悩みを解決する」、Bは「肌の悩みが解決する」になっています。
さて、違いがわかったところで改めてお聞きしましょう。
どちらがタイトルとして望ましいでしょうか?
答えは「B」です。
Aの「を」は「読者自身が解決する」というニュアンスが出ていて、手間のかかる印象があります。
一方で、Bの「が」は「結果として解決する」というニュアンスが出ています。なにもしなくても解決できそう。ラクそうな印象です。
つまり、Bのほうが「負担が少なく感じられ、自然な解決を期待できる」ように思えます。人間、ラクをしたい生き物なので、より読まれる可能性が高いのはBです。
こんなふうに助詞を「を」から「が」にするだけでも印象は大きく変わります。おもしろいですよね。
タイトルだけでなく依頼や断り、謝罪など「ささいな表現が相手の印象を左右すること」はビジネスでもプライベートでもしょっちゅうあります。
たとえば、料理をつくろうとしているパートナーから「今日のお昼、うどんでいい?」と尋ねられて「うどんでいいよ」と答えたら、「『で』じゃなくて『が』でしょ!」とむっとされますよね。それと同じです。とくに細部を流しがちな人は意識してみてください。
「営業力を上げる」と「営業力が上がる」、「肌の悩みを解決する」と「肌の悩みが解決する」――これらの違いに気づき、適切な表現を選べるようになると、より読み手に寄り添った文章を書けるようになります。ぜひ意識してみてください。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。