服飾史家の中野香織さんはケンブリッジ大学でダンディを研究したひと。スーツが約350年も永きにわたり、男性服の中心に君臨しつづける理由のひとつに「自由」があるのでは、と。スーツの考察と最新のスーツを紹介します。
スーツ 78万円、シャツ 5万6000円、ネクタイ 2万9000円、チーフ 2万円(すべてキートン)
ETRO(写真右)
スーツ 39万円、シャツ 5万3000円、ネクタイ 2万3000円、チーフ 2万1000円(すべてエトロ) 時計 122万5000円(ジャガー・ルクルト)
現在のスーツは、1850年ぐらいに出てきたラウンジスーツが直接の原型になっています。この当時、フロックコート、準礼装としてモーニングコート、夜間着用するテールコートの3種類のスーツがフォーマルとして認められていました。
これらはいずれも、腰に切り替えが入っており、体のラインに沿っていたから堅苦しかったのです。苦しいので、ラウンジでくつろぐときぐらいはゆったりした上着を着よう、ということでラウンジスーツが生まれました。くつろぎ着、より自由な服装だったのです。
KITON/ナポリの伝統的な製法で縫い上げる「ラサ」
柔らかな仕立てを得意とする同ブランドの「ラサ」。大きな特徴は、型くずれを防ぎ、シルエットの造形化の補助する芯地に、麻を使用していること。麻の芯地は、初めのうちは若干のハリと硬さを感じるが、着込めば着込む程に人の体型に馴染んでいく、という特性を備えている。
春夏らしく、涼やかなブルートーンでまとめた装いには、遊び心を演出するために、Vゾーンを鮮やかに彩るイエローのネクタイをあわせている。
ETRO/ワンランク上のスーツ「サルトリア・フェリーチェ」
色と柄を巧みに操るエトロが提案する「サルトリア・フェリーチェ」は、随所に職人の手仕事が入ったワンランク上のスーツコレクションだ。このネイビースーツには、パープルの繊細なステッチストライプとシャドーストライプという、2本の異なるストライプ柄をあしらう繊細な仕事が施されている。
端正だが、華やかさを兼ね備えた一着のVゾーンは、ブルーのネクタイとホワイトシャツでシンプルにまとめつつ、胸元のチーフでエレガンスをさり気なく演出した。