大株主の横やりで解消となった
富士フイルムとゼロックスの買収合意
5月13日、米国事務機器大手のゼロックスコーポレーション(ゼロックス)が、富士フイルムホールディングス(富士フイルム)による買収合意を解消すると発表した。解消の主な理由は、ゼロックスの大株主であるカール・アイカーン氏が買収に横やりを入れたことだ。
既に同氏は、ゼロックス1株につき40ドル以上なら買収を検討すると表明している。その行動を見ていると、買収金額を釣り上げる同氏一流の戦略とも見える。富士フイルムは、アイカーン氏の要望に応じなかった。富士フイルムは、アイカーン氏の仕掛けたマネーゲームに巻き込まれることを拒否したともいえる。
今回の買収劇解消の決定によって、長い目で見て不利益を被るのはむしろ米国のゼロックスとその株主かもしれない。クラウドコンピューティングサービスが世界に浸透する中、今後もペーパーレス化の波は衰えることは考え難い。ゼロックスが手掛ける印刷機などへの需要は減少することは避けられない。同社が生き残るには、コストカットが必要だ。
ただ、それだけでは不十分だ。企業の成長のためには構造改革を進め、新しい分野や、期待収益率の高いビジネスの創造が求められる。その取り組みをゼロックスは進めてこなかった。富士フイルムとの経営統合は、イノベーションが遅れているゼロックスにとってチャンスである。
一方、富士フイルムは経営の革新を続け、新しい事業分野の創造を通して需要の取り込みに注力してきた。米国ゼロックスの買収の先行きは見通しづらいものの、富士フイルムはこれまでのイノベーションの道を歩み続ければよいだろう。