インターネットのない時代
マーケティングができるのは……
今年も桜が咲き、多くの新社会人が新しい生活をスタートする季節になりました。当社にも大学を卒業したばかりの4人のフレッシュな新卒社員が入社し、これからさまざまなプロジェクトに実際に参加してマーケッターとしての道を歩み始めることになります。
多くの企業で今年の新卒社員が入社したばかりのこの時期ですが、すでに来年の新卒学生の選考が始まっています。われわれも何度か会社説明会を実施して、多くの学生と接していますが、今の学生の情報収集力にはびっくりさせられています。
当社を受けに来るのはマーケティングやコミュニケーションに関わる仕事をしたいという思いを持っている学生たちです。彼らは、広告代理店、PR会社、販促会社など特定領域に特化した専門性の高いマーケティングを生業とするタイプの企業と、当社のように統合的にすべてのマーケティング領域を網羅する新しいタイプのコンサルティング型企業との違いについて非常によく勉強していて、会社説明会でも「なるほど」というほどの鋭い質問を受けるケースも少なくありません。
これは、インターネットによって多くの情報を収集することが可能になったことはもちろん、ソーシャルメディアによってつながったさまざまな業界の人びととの直接的な情報交換で、私たちが学生の頃とは比べ物にならないほど豊富な情報量を持っているからなのでしょう。
私は大学生の頃マーケティングを専攻していたため、就職活動に際しては、やはりマーケティングやコミュニケーションの分野で仕事をしたいという思いを持っていましたが、20数年ほど前は、この分野で考えられる就職先の選択肢は大きく次の三つでした。
一つは、事業会社のマーケティング担当として広告や商品開発に携わること、二つ目は広告代理店へ、三つ目がマスメデイアへの就職です。私のゼミのOBもこの領域で働いている方々が大半でした。
私は文章を書くのがあまり得意なほうではないのでマスメディアで働くことはあまり考えませんでした。仲間の多くはテレビ局と大手の新聞社、出版社が第一志望でしたが、それら人気の高い会社に入れる人はほんのひと握りです。それに、私がいちばんやりたかったのは、「どんなコミュニケーションをしたら、消費者に購買を喚起できるか」という消費者行動の探究でした。
コミュニケーションという意味では、当時はマス広告の全盛期であり、今日の大手広告代理店もまだ上場前という時代でしたから、非常に積極的にあらゆるチャレンジをしていました。とはいえ、消費者の購買行動に大きな影響力を持つのは、コミュニケーション以前に商品の価値そのものです。私の中には、「売れる商品を開発してみたい」という思いもありました。