約14年前の1998年、今はカリスマ経営コンサルタントといわれる神田昌典氏が、処女作を出版した。そして、その作品は、2011年12月、『新版 小予算で優良顧客をつかむ方法――マーケティング常識11のウソ』となって帰ってきたのである。14年前の作品と聞いて、「古すぎて役に立たない」「当時とは環境が違う」という疑問があるかもしれない。しかし、今回新たに書き下ろされた「新版へのまえがき」と「章末コラム」を引用しながら、2012年を迎える今こそ、手にとっていただきたい作品であることをお伝えする。(構成:編集部 村田康明)
無名の男の「非常識」が、マーケティングの「常識」へ
本書の一字一句は、カリスマ経営コンサルタントと世間では呼ばれている「神田昌典」により書かれたものではない。「本当に食べていけるのか?」「本を書いたところで、誰が読んでくれるのか」と不安に震えていた、独立した直後の、34歳が書いたものである。
14年前、肩たたきで職を失った男が、怒りを頼りに自らを奮い起し、不安のなかで一字一句を紡いでいったのが本書である。
それからときが経ち――無名の男が主張した「非常識」は、多くの人々に実践され、まねされ、改善され、そしてマーケティング分野における「常識」になった。(「新版へのまえがき」より)
著者である神田昌典氏自身も語るように、『小予算で優良顧客をつかむ方法』は、肩たたきで失職し、再起をかけた神田氏によって書かれた作品だ。
総合ビジネス誌で「日本一のマーケッター」とまで評される神田昌典氏が、今の姿からは想像もできないような、苦しい時代を乗り越えてきたのである。
本書を手にとり、適当にページをめくって、パラパラと目を通していただいただけでも、上に書かれていることがウソではないとご理解いただけると思う。神田氏は、こうも語っている。
悔しかった。だから、私は本を書いて、喧嘩を売った。メディア本位の広告代理店をこきおろし、理屈ばかりの経営コンサルタントを鼻で笑った。(「新版へのまえがき」より)
もしかしたら、あなたの目に偶然飛び込んできた文章は、「読みやすい」ものではないかもしれない。現在の神田氏をご存じの方からすると、その荒々しさに驚きすら感じるほどでもある。しかし、そこに紡がれた一字一句には、力強く、そして明確なメッセージが残されている。