筆者は日本で「介護・福祉」関係の仕事をしているが、その関係上、しばしば痛感するのは、中国と日本での「死生観」の大きな違いである。今なお中国では、「死」を忌み嫌う風潮が強い。それは日本では考えられないほどのレベルである。(日中福祉プランニング代表 王 青)
ブッシュ元大統領のバーバラ夫人の葬儀が
中国でも話題となったのは「死生観」の違い
4月17日、アメリカ・ブッシュ元大統領のバーバラ夫人が92歳でこの世を去った。夫人が延命治療を断ったことや葬儀の模様が中国でも報道され、大きな話題となった。
というのも、葬儀の際、参列者の中から泣く声が聞こえてくるどころか、所々で笑い声が起きたり、追悼の辞から故人の生前の楽しいエピソードが述べられたりして、まるで何かの「お祝いの会」のような光景だったからだ。また「ユーモアと笑顔がたっぷりの追悼式であり、“暖かい時間”が流れていた」とも報道されていた。
折しも、4月は中国でお墓参りが集中する時期だ。4月5日は中国の伝統祝日「清明節」(お墓参りと先祖を祭る日で、日本のお盆に当たる)で、毎年この時期になると、死や葬儀に関する話題が増える。
「どう死と向き合うのか」「命の尊厳」といった問題が議論される時期でもある。
実は中国では今も、「死」は禁忌である。
携帯電話の番号、車のナンバー、住む階などには、できれば「4」という数字を避ける。日本と同様、発音が「死」と同じだ。たまに、日本でも気にする人がいるとは聞くが、その割合は中国のほうが圧倒的に多い。
また「死」という言葉を口にするだけで、「縁起が悪い、不潔」と見なされる。