セブン阿久津新体制、国内コンビニ立て直し「100日プラン」の全貌と「4人の参謀」の実名…ハネムーン期間終了で問われる結果と指導力Photo:Bloomberg/gettyimages

8月6日、セブン&アイ・ホールディングスは2030年に向けた新たな中期経営計画を発表した。その達成で重要な役割を担っているのが、国内コンビニ事業を行うセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)だ。5月に就任した同社の阿久津知洋社長は、今回の新中計に先んじて、社内で戦略の発表と100日プランを実行。ダイヤモンド編集部はその内容が示された戦略マップを入手した。そこには、新中計では具体的に説明されなかった国内コンビニ回復へ向けた具体策が並んでいた。阿久津体制での4人の参謀の実名と共に詳報する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

セブン&アイ自力成長へ
鍵握る阿久津新体制

 8月6日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は2030年に向けた中期経営戦略を発表した。

 24年8月、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を受けたセブン&アイ・HDは、クシュタールと協議を進めてきたものの、7月22日にクシュタールが買収提案を撤回。セブンは買収の脅威から解放されたわけだが、それは同時に、クシュタールに買収される以上に企業価値が向上する、自力での成長戦略を内外に示さなくてはならなくなったことを意味していた。

 そこで発表されたのが8月6日の中期経営計画で、小売業界のみならず商社や市場関係者は、セブン&アイ・HDの“お手並み拝見”とばかりに、高い関心を寄せていた。(『セブンがクシュタールによる買収撤回で自力成長路線へ、北米コンビニ上場の死角と国内テコ入れ策「焼きたてパン」「7NOW」の実力は?』参照)

 計画では、グローバルな経営体制にアップデートすることや、30年までに全体の売上高に当たるHDの営業収益を24年度比13%増となる11.3兆円に引き上げることなど、野心的な目標が掲げられた。他にも、スーパーストア事業や金融事業の切り離し、今やHDの営業利益の約半分を稼ぐ北米事業の強化策などが盛り込まれた。

 しかし、現在のセブン&アイ・HDにとっての最大の課題であり、今回発表された中計達成の要なのが、国内コンビニ事業を担うセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の立て直しだ。

 現在のSEJは、かつて誇った王者の威光に陰りが見え始めている。実際、24年度決算の国内コンビニエンスストア事業の営業収益は前年比1.9%減の9041億円、営業利益は同6.8%減の2335億円で、減収減益だった。

 そんな状況のSEJについて今回の中計では、フランチャイズ契約を結ぶ加盟店オーナーから得られるチャージ収入などの営業総利益を、現在の8430億円から約1.1兆円へと増収させるほか、約1000店舗の純増を行い、デリバリーやフレッシュフードを強化するなど、大胆な目標数値が設定された。

 陣頭指揮を執るのは、5月1日にSEJ社長に就任した阿久津知洋氏だ。中期経営計画を発表する会見では、HD社長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏へと質問が集中し、阿久津社長が口を開くことはなかったが、中計達成のキーマンが阿久津社長であることは疑いようがない。

 それを自認しているのか、阿久津氏はSEJ社内で就任後、4つのテーマからなる「100日プラン」を実行していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。社内資料には阿久津体制下の“参謀”とみられる4人の実名が並んでいた。

 8月8日は、阿久津社長が就任してから100日目だった。4人の参謀の下で、SEJで具体的に何が実行されていたのか。次ページでは、4人の実名と担った役割の詳細を明らかにする。