発売即4刷。「かつてないほどに実用性の高い文章術」としてビジネスパーソンから高い評価を受けている『10倍速く書ける 超スピード文章術』の著者・上阪徹氏が、そのエッセンスをたっぷり紹介する本連載。今回は、「文章のお手本」として読み続けている雑誌と、「読む」と「書く」の関係について明らかにする。(構成:今野良介)
「良質な総合週刊誌」が
文章の教科書になる
「いい文章が書きたいのですが、どうすればいいですか?」と相談を受けることが、よくあります。
ところが、「あなたにとってのいい文章って、どんな文章ですか?」と聞くと、答えていただけないことが少なくありません。自分にとっての「いい文章」を定義せずに、「いい文章」を目指すことはできません。
わたしは、ライターとして独立してから23年間、書籍を中心に雑誌、webメディアなど様々な媒体で文章を書かせていただいていますが、文章の書き方を学んだことも、文章の書き方を記したノウハウ書を読んだこともありません。起承転結にのっとって文章を書いたこともなければ、今でも、自分は文章がうまいと思ったことすらありません。本当です。
ただし、1つだけやっていたことがあります。「こんな文章が書けるようになったらいいなぁ」と感じた週刊誌を、25年以上読み続けてきたことです。
わたしにとっての文章の「お手本」は、朝日新聞出版の総合週刊誌『AERA』です。
20代でうまく文章が書けずに苦しんでいた頃、「何かお手本を見つけないといけない」と思い、書店の雑誌や本を読み尽くして比べて、最終的にAERAを選択しました。
理由は、内容がとてもわかりやすいから。
漢字と「かな」のバランスもちょうどいい。
ほんのちょっと知性が漂うけれど、堅すぎない文体もいい。
「、」や「。」の位置も自分で読んでいて違和感ない。
ワンセンテンスも短くて、リズムがいい。
また、長期間読み続けられるという点でも、総合週刊誌は都合がいいのです。毎週異なる内容で、政治経済から文化芸術やスポーツまで、幅広い記事が載っている。ページ数もちょうどよく、じっくりすべての文章に目を通せる。
毎週毎週、何年も読み続けているうち、AERAの文体が自分の中に染みこんでいったように思います。そして、『超スピード文章術』に詳しく書いた「しゃべるように書く」という気づきとともに、私なりの文章スタイルが形作られていきました。
当然ながら、『AERA』がすべての人にとっての教科書になるとは限りません。大切なのは、どこかで聞いた「文章の型」に無理やり自分の文章を当てはめるのではなく、自分にとっての「わかりやすくてスラスラ読める文章」を見つけること。そして、「なぜ、読みやすいのか?」「どういう文章がわかりやすい文章なのか?」を考えながら読み続けることです。
また、良質な総合週刊誌は、多くの編集者や校正者の目を通して世に出ています。あなたが「他人に見せて恥ずかしい文章」や「みっともない文章」を書きたくないと思っているなら、総合週刊誌の文章は、お手本になりやすいと思います。
なぜ、編集者は
プロの文章を直せるのか?
ちなみに、出版社の編集者は、著者の文章を読み込んだ上で、読みやすいように著者に修正を依頼したり、ときには自ら文章を書いて、改善案を著者に提案したりします。
しかし、彼らは、必ずしも学生時代に文章を学んでいた、という編集者ばかりではありません。私が知っているだけでも、法学部、経済学部、工学部出身の人などがたくさんいます。
文章を専門的に学んできたわけでもないのに、なぜ編集者は、プロの文章に手を入れることができるのでしょうか。
すべての編集者に共通しているのは、仕事やプライベートを通じて、膨大な量の文章を読み込んでいることです。結果として、彼らは何かの特別な学びをしたわけでないのに、文章のプロになった。
良質な文章を読み続けることは、書く力につながる。
それを証明しているのが、編集者の文章力だと思うのです。
なお、「わかりやすくて役に立つ文章を極限まで速く書く方法」については、私が23年間のライターとしてのキャリアで見出した独自のノウハウを紹介しているので、ぜひ『超スピード文章術』をご覧になって、使い倒してください。
(参考記事)
読者を「1人」に決めると爆速で書ける。しかも伝わる。