
国家への誇りを星条旗に託し、あるときは叫び、あるときは涙を流すアメリカ人。彼らはどうしてあんなにも星条旗に思いを寄せるのだろうか。世界中の国威発揚スポットを見て回った筆者が、星条旗愛を喚起させてやまない、とあるスポットをご紹介する。※本稿は、辻田真佐憲『ルポ 国威発揚―「再プロパガンダ化」する世界を歩く』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
いつでもどこでも星条旗を
掲げるアメリカ人の心理に迫る
米国人は星条旗が好きである。米国の広場で、街路で、駅で、空港で、ミュージアムで、この旗をみない日はない。国歌のタイトルまで「星条旗」だ。
首都ワシントンの中心部に位置するアメリカ国立歴史博物館にも、正面玄関入ってすぐのところに特別な星条旗コーナーが設けられている。そしてここに展示されているものは、無数にある星条旗のなかでとりわけ歴史的な意義が大きい。
入口をくぐると、なかはほとんど真っ暗だった。まえのひとがよく見えず、何度もぶつかりそうになる。スマホのライトを使おうとしたら、職員から注意された。資料を保護するため、写真撮影も許されていなかった。
慎重に進んでいくと、奥まった場所にガラスケースに守られた大きな星条旗が横たわっているのが見えた。薄明かりのなかで照らし出されたその姿は、まるで神殿の奥に安置された聖遺物のように神聖な雰囲気を漂わせていた。
縦は30フィート(約9メートル)、横は34フィート(約10メートル)。もとは横42フィート(約13メートル)だったが、ところどころ大きく破損しており、汚れも目立っている。
星条旗のデザインは、州の増加にともない変化してきた。