今回の買収に関する報道によれば、シャープはダイナブックブランドだけでなく従業員や工場を含めて買収するということなので、要は東芝グループの赤字事業の経営を、シャープなら立て直せるという算段があっての買収計画ということになる。大手企業にとって40億円という金額自体はそう大きくないが、赤字事業ということを考えれば将来の事業リスクは跳ね上がる。それでも採算が合うという同社の「そろばん勘定」はどこから来ているのだろうか。

縮小市場でも魅力はある
経営の帳尻を合わせることが重要

 先に一般論を述べると、縮小市場の商品だからといって魅力がないビジネスだと言い切ることはできない。そして世の中には赤字企業を買収して、それを黒字化することを得意としている企業は結構ある。要は、縮小する市場において見込める「入り」の部分、つまり売り上げやサービスからの収入計画に対して、黒字になるように「出」の部分となる費用や投資の面をコントロールできるかどうかが、事業を黒字経営するために必要な考え方なのだ。

 そして個別論として重要なことは、シャープを買収したホンハイがまさにこの事業の黒字化に精通しているということだ。ホンハイグループの郭台銘(テリー・ゴウ)会長の右腕で、シャープの社長に着任した戴正呉氏は、まさにこの原則を熟知していた。

 それまで億単位の決裁が部下に権限委譲されていたシャープの仕組みを、戴社長は数百万円単位まで引き下げて、自らがチェックをする体制に切り替えた。出ていくお金を徹底的に管理することが、経営者としての建て直しの最初の着眼点だったのだ。

 とはいえシャープは、V字回復の過程でコストカット経営ばかりをしていたわけではない。ホンハイの資本下でシャープが復活できた背景としては、シャープ・ブランドに対しての投資が十分に行われたことが大きい。

 買収当時、韓国のサムスン電子とLG電子の二大プレーヤーがほぼ牛耳っていた世界の液晶大画面テレビ市場において、シャープもそれに匹敵するブランドであることを知らしめるため、戴社長は積極的なブランド投資を惜しまなかった。