同社東京本部の土井智恵氏は、こう話す。

「技術の仕事であれば、コミュニケーションが苦手な人でも向いているのではないか。実際、現場ではもともと職人の中にも、うつやメンタルの問題を抱えた人たちがいる。社会的な課題の解決のためにできることは何なのか。まず、やってみようと思って始めました」

 研修は最初は講義形式で、仕事とは何なのか、何のために働くのかを問いかける。コミュニケーションの苦手な人のために、コミュニケーションの取り方など、働く基本的な心構えを一緒につくる。支援ではなく、採用を前提に研修を行うところが同制度の特徴とも言える。

 次に、営業所で仕事に慣れる期間をつくる。その後、地上にある屋根の模型で練習する。技術研修を集中的に行い、徐々に慣れてきたら実際の現場に出かけ、施工を行う。営業所は、首都圏各地にある。自宅から通える現場に来てもらい、希望があれば住居も提供する。

最初は不安で仕方なかった
今は皆で話し合えるのが楽しい

 Aさん(35歳)は大学を卒業後、認知症の家族の介護のために郷里に戻ったものの、約12年にわたり仕事に就けずにいた。昨年東京に出てきて、長年のブランクがあっただけに、いきなり就労することへの不安はあったという。

「仕事は楽しいときもあるし、きついときもある。やれるだけやってみようと思って、1年続けてきた。意外に1人で生活できる面では、何とかなるという感触を得た」

 Bさん(26歳)は、バイト経験はあったものの、1人でボーっとするような生活を送ってきた。それが現在は、「1人の時間も好きだけど、外に出て仲間と仕事のことを話し合ったり議論したりする、そういう違う時間ができて楽しい」と話す。

 仕事は、屋根の上で板金というプレートを形に合わせて取り付ける。コンクリートの薄い板を貼っていく。1人だとつらいけど3人のチームでできるから、気持ちが楽。お互いに気づいたことや、「こうやったほうがよかったね」などと言い合える関係のメリットが大きいという。