日立製作所に、有力グループ企業として一目置かれる日立建機。数年前の市況悪化で苦しんだが、キャタピラーなど、巨大企業が君臨する建機業界で存在感を示すための攻勢ステージにようやく転じている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
「国内需要の漸減を大前提とした国内事業の改革に関し、日立グループで先行しているのは日立建機だ」。リーマンショック後、業績が悪化した日立製作所(以下、日立)を再建した川村隆・日立前会長が2014年に会長を退く際、日立グループの従業員に宛てた書簡の一部だ。
売上高の8割を海外で稼ぎ、1兆円企業を目前とする建設機械メーカー国内2位の日立建機は、川村氏の言葉が象徴する通り、日立の有力なグループ会社である。
グループの結束は、決算資料の“ちょっとした数字”にも表れる。それが18年度に予定する46億円の収益力改善費用だ(図(1))。世界各地に、効率的に製品を供給することなどを目的とするシステム改編費が一部を占めるのだが、その費用の支払先は日立だ。日立建機には、日立製ネットワークにできるだけ便乗するという方針があり、改編作業を日立が担うからである。
むろん、「グループとしての恩恵はあるものと思っている」(桂山哲夫・日立建機財務本部長)。46億円には、料金の“グループ割引”が反映されているとみられる。
日立建機がこうしたシステム改編に資金を割けるようになったのも、今だからこそだ。17年度は、インフラ投資の増加や資源価格の回復などによって建機需要が増加。加えて為替が円安に振れ、業績が大幅に改善した。18年度も好調な需要が続く見通しだ(図(2))。
しかし、「またいずれ沈むときが来る」と大手建機メーカー幹部が達観するように、建機業界は需要の浮き沈みを繰り返してきた。
数年前には不動産投資の鈍化などにより中国の建機需要が低迷。最悪期の15年度の油圧ショベルの世界需要は、リーマンショックで世界中の経済が冷え込んだ09年度レベルとなり、日立建機も営業利益の落ち込みにあえいだ(図(3))。
そこで日立建機は戦線の見直しを決断し、市況の変化に左右されない筋肉質な体制を構築してきた。