不正とは無縁に見える上場企業で粉飾会計問題が後を絶たない理由コンプライアンスが根付いているはずの上場企業で、粉飾会計問題が後を絶たない理由は?経理部員は不正とどう向き合うべきか(写真はイメージです)

「え?あんな真面目そうな人が」
経理で不正が起こる3つのパターン

 会社所有の資産全般や経営データの管理など、信託業務も担う経理部員。社内規定などを順守しながら、しっかりと任務に従事することは当たり前なのですが、時折コンプライアンスがしっかり根付いているはずの上場企業で粉飾会計問題が取り沙汰されます。

 こうした背景には、諸々の要因が潜んでいるのでしょうが、決して一経理担当者の仕業ではなく、上層部の圧力や組織ぐるみの悪しき温床があると、誰しもが想像するところだと思います。そうなると、非管理職の経理担当者が体制に異を唱えることが難しくなるのは想像に難くありません。

 経理担当者にとって、不正を容認しない、法令に抵触することを拒む、時には警告を発することなどは、当然の任務のはずです。もしも不正に対して、経理として当たり前の機能が働かなくなることにどこかで諦めの気持ちを持っているとしたら、改めてその問題を直視しなければならないでしょう。

 今回は、自社に潜んでいる「不正の温床」をどのように払拭するべきか、あらゆる視点から策を再考していきます。

「たまにありますね。やりとりしていた取引先の経理担当者の方が急に替わってしまい、関係者に理由を尋ねると、現預金の横領や流用をしていた……とこっそりと教えてくれるのです。えー!あんな真面目そうな方が……と驚いてしまいますよ」

 そう語るのは、人材紹介会社の経営に携わる男性(50代)です。筆者は、様々な規模・業種の経営者や経理担当者と接してきましたが、経理による不正行為は決してまれではないことがうかがわれます。報道されるのはごく一部の大企業のケースであり、中堅・中小の企業については、よほど大きな被害が生じたケースではない限り、報道されることはありません。 

 このことから考えると、経営規模の大小に関係なく不正が起こり得る要素はあるため、それらを洗い出してみる必要があるでしょう。筆者がコンサルタントとして接してきた経験から言うと、不正の温床が発生する背景には以下の3つの原因が潜んでいるようです。

 それぞれ具体的な例を掲げ、講ずべき対策を示します。あなたが身を置いている現場の中でも思い当たるところはないか、また未然に防ぐための対処策が諮られているか、振り返ってみましょう。