アドラー心理学の教えを哲人と青年の対話形式でわかりやすく解説して大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』(176万部)と『幸せになる勇気』(50万部)。このたびその2冊が、豪華男性声優が朗読するオーディオブック・シリーズ「極上voiceメソッド」で発売されることになりました(『嫌われる勇気』は発売中、『幸せになる勇気』は7月27日発売予定)。
そこで、哲人を演じた声優の井上和彦さんと青年を演じた細谷佳正さんのお二人に、同作品についてお話を伺いました。前編ではどのような思いでそれぞれの役を演じられたかを中心に語って頂きます。(写真:田口沙織)

何を言われてもイライラする青年と>
けっしてイライラしない哲人

──お二人は今回のお仕事で初めて原作の『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』を読まれたそうですが、それぞれ演じられた哲人と青年にどのような印象を抱かれましたか?

井上和彦(いのうえ・かずひこ)
声優
1954年生まれ、神奈川県出身。73年のデビュー以来『キャンディキャンディ』『サイボーグ009』『美味しんぼ』『NARUTO ナルト 疾風伝』『夏目友人帳』など数多くのアニメ作品に出演。映画吹き替えやナレーション、舞台・映像作品への出演など多岐にわたって活動。

井上和彦(以下、井上) 僕が演じた哲人はすべてを達観した人という印象ですね。考え方、生き方など、さまざまな哲学や学問を学んでアドラー心理学にたどり着き、生きるのはシンプルなんだということをしっかり伝えていこうと考えている人物。お話を頂いて台本を読み始めてから収録が終了するまで、そのことはずっと意識していました。

細谷佳正(以下、細谷) 僕は哲人にさまざまな議論をふっかける青年を演じたんですが、すごく身に覚えがある感覚でした。自分のことが嫌いで、自分に降りかかるすべての不幸を他者や環境のせいにしがち。知り合いにもそういうタイプがいたのでモデルにしましたし、誰にでもそういう部分はあると思う。コンプレックスを過剰に意識していると、何かと他者のせいにしたくなるだろうし、ライバル意識を持っている人間が上に行けば羨んだり、その人より上に行きたいと願ったりする。そういう面がまったくない人間なんていないでしょう。そういう意味ではすごく入りやすい役でしたね。

──そのような人物を演じられる一方で、今回は本の朗読という面もありました。アニメのアフレコ等の普段のお仕事とは違いがありましたか?

細谷 違いましたね。普段、現場で意識するのはご一緒する方のお芝居なんですが、今回は自己啓発的な内容の本なので、自分が演じる青年のセリフを読んで自らも学びながら進めていく感覚がありました。また、オーディオブックは耳から入る情報しかないので、聴いている方にきっちり伝わるように読もうという意識は強かったと思います。

井上 僕も読みながら「うーん、勉強になるなぁ」と感じました。普段と違う点としては、今回は細谷くんと一緒に収録できたのが一回だけだったんです。でもそのときは「あぁ、やっぱり一緒にやるのはいいなぁ」と。ただ、一人でやっているときと違って、感じる「圧」は凄かった(笑)。そこまでくるかと(笑)。

細谷佳正(ほそや・よしまさ)
声優
1982年生まれ、広島県出身。『メガロボクス』『この世界の片隅に』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』『刀語』『進撃の巨人』などのアニメでメインキャラクターを務めるほか、映画・ドラマの吹き替え、ゲーム、ナレーションなどでも活躍。

細谷 青年としてはなんとか井上さんの哲人が語ることを「そんなのは絵空事なんだ!」と認めさせたいわけです。実は、井上さんとご一緒した一回というのが、2冊めである『幸せになる勇気』の冒頭部分の収録だったんです。『嫌われる勇気』の最後に「もはや論破などとは申しませんから」と言って去った青年が、3年後に「話が違う!」と論争しにやってくる場面です。だから、そういう感じを出さなきゃいけなくて(笑)。

井上 僕からすると「この人なんにも学んでないなぁ」って(笑)。というのは冗談で、僕は哲人という人物を演じないといけないわけです。ある種、崇高というか、生きるとはどういうことかを真剣に考えている人。だから自分も同じようにならなきゃという思いはありました。いくら青年のほうがガツンガツンきても、いい加減に話わかってよ、ものわかり悪いなぁなんて思わずに(笑)。

細谷 僕個人は哲人の言っていることわかるんですよ。でも、青年としてはものわかりを悪くしないと哲人との対話が引き立たない。だから何を言われてもイライラするぞと(笑)。

井上 僕は何を言われてもイライラしないぞと(笑)。