キーマンを押さえずに
失敗した筆者の体験談

 かつて筆者がハウスメーカーのダメ営業マン時代にも、このような失敗をしばしば繰り返したものだった。

 20代後半のお客様と商談していた時のこと。どういうわけが、このお客様は当社の建物を気に入ってくれた。

 当然、営業マンとしては、このチャンスを逃すわけにはいかない。じっくりと時間をかけて建築現場や工場をご案内し、あとは値段だけという感じになった。概算見積もりを出したところ「なるほど、これでしたら払っていけます。大筋いいと思いますよ」とほぼ契約になる感じだ。まさにこれ以上、理想的な展開はない。

 後日、満を持して詳細な見積もりを提出した。

 概算見積もりを出していることもあり、お客様は納得してくれた。

 しばらく見積もり書を見つめ、「これでいいと思います」とゆっくりうなずいた。

 心の中でガッツポーズをしながら「では、契約の手続きですが……」と言った瞬間、お客様は「では、土地の持ち主である父の意見を聞きまして、後日連絡しますね」と帰られてしまった。

 よくよく考えてみれば、今回の計画はお父さんが所有している土地の一角に建物を新築するというもの。キーマンであるお父さんを押さえておく必要があったのだ。

 内心「しまった!」と思ったが、もう遅い。こうなるともう取り返しはつかない。

 2週間後に「いろいろしていただいたのに本当にすみません。父の知り合いの会社で建てることになりました」と連絡をいただいた。

 お客様に罪はない。キーマンを押さえずに進めた私が明らかに未熟だったのだ。