検体を採取してから1時間ほど待つと、診察室に呼ばれた。

 待ち構えていたのは女性の医者。検査結果を見て医者が口を開く。

「……まったく問題ないですね!」

 その言葉に緊張がほどけ、思わず安堵の声を漏らした。懸念だった運動率は、40%以上が正常値のところ、しっかり52%あった。生存率や精子濃度といったその他の数字も正常だった。

「精子の状態は、体調によるところが大きいです。一度の検査結果が悪くても、何回か受けることが大切ですし、ストレスを避ける、禁煙をするなど普段から体調に気遣う生活を続ければ、タイミング法(排卵に合わせて性交渉し妊娠を図る方法)で十分妊娠できますよ」

 医者の説明にうなずきを返す。前回の検査で、不妊治療にかかる費用や家族計画など将来のことを悲観していたが、とりあえず結婚話は進めてもよさそうだ。

 ちなみに、最初のクリニックは自由診療扱いだったが、こちらでは検査に保険が利き、1000円で受けることができた。

 不妊に悩んでいるわけではない一般男性でも、精子に異常が見られるケースは多いという。その意味で、積極的に検査を受けるのは大事だし、一度の検査で一喜一憂することなく、健康的な生活をして継続的に精子の状態を確認することは有用である。

 ただ、男性の不妊検査が重要な一方で、男性が一人で受けやすいクリニックがとても少ない。今回受診したクリニックは、いずれもオンラインで予約でき、かつ男性一人でも訪れやすいレイアウトや雰囲気づくりをしていた。

 一般的には、婦人科といった女性中心の病院で、女性側が受ける検査に男性が同行して検査を受けることが多い。女性側にバレずに検査を受けたい人もいるだろうし、女性にとっても男性を引っ張り出すのは気が引けるかもしれない。

 価格は医療機関によって幅がある。中には、精液検査だけで3万円というクリニックもあり、スクリーニングで受けるにしては高額すぎる。これでは気軽に受けるのは難しい。

 多くの不妊治療に携わる医者が男性側の自覚の大切さを訴えること、男性にとっても検査を受けやすい環境や土壌を作ることが両輪で進む必要がある。