「不妊の原因の半数は男性にある」と、産婦人科医師・富坂美織氏は言う。
この事実は少しずつ知られてきたが、まだ少なくない男性が検査を嫌がり、責任を女性になすりつけようとするようだ。
しかし、女性と比べて男性の検査はとても簡単だし、無精子症・乏精子症などへの対策も進歩している。
「妊娠・出産・不妊のリアル」を積極的に知らなければならないのは、むしろ男性なのだ。
男性不妊と女性不妊、原因は半々
いまでも、不妊の原因は女性にあると思われていることが多いようです。お姑さんから「子どもができないけどどうしたの。病院に行ってらっしゃい」とお嫁さんが言われることもあると聞きます。
実際には男性不妊と女性不妊の原因は半々くらいなのですが、「原因は自分にある」と思い込んで積極的に受診する女性が多いのです。一方、男性は「自分は大丈夫」と思い、受診に消極的です。
男性側の受診が少ない理由の1つに、再婚の場合で、前の結婚で子どもがいるケースがあります。すると自分は大丈夫だと思うようです。
しかし、精子は毎日つくられるものでも、精子をつくる精巣は加齢とともに変化し、劣化する場合があります。ですから前に子どもがいても精液検査は必要です。
ちなみに、C型肝炎の治療薬、免疫抑制剤、痛風薬、リウマチ薬等を使用している男性では、胎児に染色体異常等のリスクがあるため、使用中に避妊が必要になることがあります。
また、ED(勃起機能の低下)の悩み相談もよくあります。生活習慣の変化とともに潜在的に増えています。ストレスを減らすことが大切ですが、外国人の患者さんからの質問で多いのは、治療に何を飲んだらいいかということです。バイアグラ、シアリスといった薬を処方することが多いです。
精子所見改善のためにおすすめのサプリについてもよく質問を受けます。
精子運動率の改善のためには、抗酸化剤として、ビタミンEやビタミンC、亜鉛やセレンがよいとされています。この際、6カ月以上、内服を続けることが大切です。国際医療福祉大学教授の岩本晃明先生によると、トマトを加熱処理したトマトソースやトマトジュースなどに含まれるリコピンも、精子運動率の改善に効果があるそうです。また、精子濃度の改善には、ビタミンB12や葉酸が有効とされています。