ディズニー社も同様に、最初のディズニーランド設立以降、経営者も変わり、コンテンツ事業、テーマパーク事業の低迷期があったにもかかわらず、実に50年以上もの間、一貫して人材育成に関わる方針と、その品質が継続されてきているのです。

 この人材育成を担っているのが、米国にある研修(育成プログラム)の開発部門「ディズニー・ユニバーシティ」です。

従業員に裁量を与え、自ら考えて動いてもらう

 ディズニー・ユニバーシティにおける人材育成の特徴は、ウォルト・ディズニーが、ディズニーランドの目的としてかつて話した言葉、「幸せを創造する」に凝縮されているといえます。

 単にテーマパークを楽しんでもらうということではなく、顧客をいかに幸せに導くかということが、徹底的に教育されます。

 ディズニー・ユニバーシティのリーダーであったダグ・リップ氏は、著書の『ディズニー大学』の中で、「ポップコーンエンパワーメント」という話を紹介しています。

〈ある日、ディズニーランドで、ポップコーンを地面に落として泣いていた子供がいました。そこにキャストが駆け寄り、「ミッキーマウスから、きみがポップコーンを落として泣いているって聞いたんだよ。それで、ミッキーが新しいポップコーンをプレゼントしてくれるって」次の瞬間、キャストの背後から大きなポップコーンが差し出された。〉

 代わりのポップコーンを提供するコストは微々たるものですが、その場にいたすべての人々が受け取るメッセージは、何にも代えがたい価値を持ちます。これが「幸せを創造する」ということです。

 多くのサービス業で「顧客のために」というメッセージが掲げられていますが、このようなことができる組織は残念ながら限られています。

 当然、無料で商品を提供することがすべてを解決するわけではありませんが、ディズニー・ユニバーシティでは、こういう状況が起こりえることが想定されているとともに、企業が従業員を信頼し、裁量を与えることが教えられています。

 研修は、単に従業員を鍛えるというだけではなく、従業員と企業が信頼関係をつくっていく場となっているからこそ、従業員は自ら考えて「幸せの瞬間」を顧客へ提供するというサイクルが生まれます。