「Fの法則」や「Zの法則」というのを聞いたことがあるだろうか。森博嗣「すべてがFになる」は本格ミステリの傑作だが、それとは話が異なる。

 読者がいま見ている画面を例に取ると、人はまず左上に注目し、そこから右へ(横へ)と視線を走らせる。その下の行へ視線を移すときも、左から右へと視線を走らせる。その視線の動きが、アルファベットの「Z」に似ていることから、冒頭の「法則」が主張される。

 ただし、何でもかんでも、こうした法則が当てはまるわけではないようだ。例えばこの画面の右側には、スポンサー企業の広告がずらりと並んでいる。「Fの法則」に従うならば、広告はウェブ画面の左側に並べるべきであろう。そのほうが、宣伝効果が高いはずだ。

 ところが実際は、そうなっていない。

 画面上の広告がこうした法則に従わないのは、「読む」と「見る」の違いに原因がある。文字を「読んで」もらう場合は、「Fの法則」が当てはまる。横書きの文字を、右から左へ読む人はいないからだ(アラビア文字を除く)。それに対して読者に「パッと見て」もらう場合、その対象物(広告など)は、画面の右側にあるのが望ましい。

 なぜか。読者の大半は、その「目」が右利きであるからだ。

 例えばいま、部屋の片隅に視線を移し、その片隅へ向かって人差し指をかざしてみてほしい。右目と左目を交互につぶり、「右目」と「人差し指の先」と「部屋の片隅」の3点が一直線で繋がる人は、右目が「利き目」になる。

「利き目」というのは本来、「効能」を意味する。ここでは「右利きの人の目」という意味で使わせてもらおう。

コンビニは店舗設計に
命を懸けている

 小売業界は“B to C”(企業businessから消費者consumerへ)で営まれていることから、店内に所狭しと並べられている商品の陳列は、「右利きの人の目」に訴えかけるように設計されている。