写真はイメージです Photo:PIXTA
台湾有事は、いきなり大規模な上陸侵攻から始まるとは限らない。むしろ中国が先に狙うのは、情報や外交、心理戦で相手の意思をくじき、「戦わずして勝つ」ことだ。こうした発想は、2500年以上前に書かれた兵法書『孫子』にも説かれている。現代中国の認知戦は、古代の兵法とどうつながっているのか。その戦略の源流を読み解く。※本稿は、紀実作家の安田峰俊『中国ぎらいのための中国史』(PHP出版)の一部を抜粋・編集したものです。
中国史マンガの軍師たちが
決まって口にする「孫子の兵法」
『キングダム』や『蒼天航路』のような劇画系中国史マンガの魅力は、迫力のある戦闘シーンだ。
ただ、王騎や呂布のような豪傑が敵兵をザクザクと惨殺する場面の陰で、直接の戦闘には参加しない軍師系のキャラクターが盛んに策を練る様子も、しばしば描かれる。策が的中すれば、ときに一騎当千の驍将の生命をも奪う。
この手の軍師キャラたちが決まって口にするのが「孫子の兵法」である。
ほとんど、現代のビジネス書の「東大式」や「マッキンゼー式」さながらにさまざまな状況で言及されているため、応用性の高いメソッドであるらしきことは見当がつくだろう。
事実、現代中国でも社会のさまざまな場面で孫子の兵法が引用される。儒教の教えに次いで、現代中国の政治や外交に最も影響を与えている思考パターンの一つだ。『孫子』は、春秋時代末期に南方の長江下流域で勢威を張った呉(三国志の呉とは別の国)の将軍・孫武(孫子)の著作とされる書物である。
孫武は斉の出身だが、同じく他国(隣国の楚)生まれの宰相・伍子胥の推挙を受けて呉に仕えた。孫武は主君をよく補佐し、やがて伍子胥とともに大国の楚を破って、呉を一気に軍事強国に押し上げた。その後の呉と隣国の越との血みどろの抗争は「臥薪嘗胆」「呉越同舟」などさまざまな故事成語の由来にもなっている。







