最大の課題は社会保障改革

 金融緩和政策を継続して、2019年に予定される消費税率引き上げを中止すべきだ(恒久的な税率引き上げに対して、一時的な景気対策を弄しても効果は限定的だ。税率引き上げを止めるのがシンプルかつ効果的だ)ということ以外に、安倍政権に期待できることがあるとすれば、それは、社会保障の改革だろう。

「人生100年時代」の掛け声に反して、日本の年金や労働制度などは、社会の長寿化と高齢者の労働参加に対して十分な対応ができていない。そもそも年齢による差別以外の何ものでもない定年が禁止されていないし、高齢者の労働参加を嫌うがごとき在職老齢年金の制度が存在し、老後の備えに対する自助を促す確定拠出年金が60歳までしか拠出できないなど、課題が山積みだ。特に、今後数十年の人口の年齢バランス変動を考えると、年金と医療の財政問題に対処することは急務だ。

 より長く働くことができる制度に変わり、将来の社会保障により安心できるようになると、消費の拡大につながって経済成長にもプラスの影響があるはずだ。

 例えば公的年金は、日本人の長寿と財政を考えるなら早急に「70歳支給開始」を標準とすべきだ。支給開始を遅らせて財政を改善すると共に、徐々に支給額を厚くして、「長生きリスクへの保険」としての公的年金を強化すべきだ。支給開始は先送りされるとしても、将来の受給者の方が手厚い年金を受け取ることができるという期待が持てるなら、現役世代に納得感が生じる。

 最近の安倍氏が70歳以降に年金を支給開始できる選択肢を検討すべきだと述べていることは、関心が正しい方向に向かっている点で評価できる。ただし、改革は相当にスピードアップする必要がある。

(1)4選を目指すわけではないから思い切ったことができる、(2)3選決定後1年程度は強力な政治的力を持つ、という今後の安倍政権の条件を考えると、「2019年であれば」年金制度の改革を含む社会保障制度の大幅な改革を決めることができるのではないだろうか。勝負は早いほうがいい。

 年金制度の改革については、政治的な力が強い政権奪取時に具体的改革に取り組まずに検討の時間を置いて3年後に制度改正するとして、結局何もできなかった民主党政権時の経緯を反面教師にすべきだ。制度を変えたくない勢力に対して時間を与えない方がいい。

 異例の3選を果たした後の安倍自民党総裁には、社会保障改革で成果を挙げることを期待したい。政治的な文脈からも、経済的な状況からも、「チャンスは2019年」であることを強調しておく。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)