植物状態の患者の意識はあるのか
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一部の植物状態の患者に
意識があることを初めて実証した研究者

『生存する意識――植物状態の患者と対話する』書影
『生存する意識――植物状態の患者と対話する』 エイドリアン・オーウェン著 柴田 裕之翻訳 みすず書房 3024円

 植物状態と診断されながらも、じつは意識がある人たち。そうと示すことがまったくできなくても、たしかな認識能力を持ち、どうしようもない孤立感や痛みを感じている人たち。そうした人たちが置かれている状況を想像し、悪夢とも思えるその可能性に身震いしてしまった経験が、おそらくあなたにもあるのではないだろうか。だが現在の科学は、その可能性を前にしてただ震えているばかりではない。誰かが現にそうした状況にあるかどうかは、なんと科学的に検証できるようになりつつあるのだ。

 本書『生存する意識──植物状態の患者と対話する』の著者エイドリアン・オーウェンは、その科学を「グレイ・ゾーンの科学」と呼ぶ。グレイ・ゾーンとは、おもに植物状態と診断されている患者の、「物事を満足に認識できないが、認識能力を完全には失っていない」状態である。そしてオーウェン自身は、グレイ・ゾーンの科学を力強く推し進めたことで広く世界に知られている。というのも彼は、一部の植物状態の患者に意識があることを初めて実証し、さらには、そうした患者と意思疎通することに初めて成功した研究者だからである。本書は、彼のこれまでの科学的探究を、それ以外のエピソードをも交えながら、わかりやすくドラマチックに紹介するものである。