新聞記事では、『北海道新聞』生活部の岩内江平記者による「化学物質過敏症 誰もが発症の恐れ 救済急げ」(昨年6月25日)など5本の記事が、実態をよく伝えている(注1)

(注1)9月に出版された『香りブームに異議あり』(ケイト・グレンヴィル著、鶴田由紀訳)と『シックスクール問題と対策』(加藤やすこ著)も、香害の理解を助ける。
前者は、香料で頭痛が起きるようになったオーストラリアの作家が、香料の危険性を徹底的に調べ、読みやすい文章で書きおろしたもの。やはり香害被害者である訳者は、あとがきで「被害者は声を上げよう」と呼びかけている。

家庭での香料使用に配慮を
教育長が保護者に要請

 こうしたメディアの報道などで香害に対する理解が広がる中で、学校現場や自治体で実効性のある取り組みも増えている。

 長野県安曇野市で今年7月下旬、市内の10小学校(児童総数約5000人)と7中学校(生徒総数約2700人)の保護者全員に、「香料についてのお願い」と題する教育長からの文書が配られた。

 文書は、近年、子どもたちが外界のさまざまな刺激に拒否反応を示し、学習に集中しにくい状況が生まれているが、香水・整髪料・柔軟剤・洗剤・シャンプー・制汗剤などに含まれる香料によって、頭痛・吐き気などの不快症状を訴える児童が出てきたことがその一つだと指摘する。

 学校では積極的に換気を行なうなどしているが、家庭での香料などの使用や来校のさいには配慮をお願いしたいという内容だった。

 北アルプスのふもとに位置する同市では、小林純子市会議員(無所属)が6月議会で「香害」を取り上げ、とくに成長期の子どもにとって柔軟剤の使用は要注意であり、国の規制を待つ間にも被害が広がる恐れがあるとし、市の対応を求めた(注2)

 これに対し、教育部長が「保護者や業者など来校される方へ呼びかけるポスターを学校の玄関に掲示すること」と「保護者向けのチラシを作製・配布すること」を検討すると答弁。その一つをさっそく夏休み前に実施したのだ。

 多くの自治体が実施する香害対策の定番は、「過敏症などに関する情報のサイト(ホームページ)への掲載」と「使用自粛を呼びかけるポスター作製」だ。

 だがサイトを見るのは関心のある人に限られるし、ポスターも多くの人の目に留まる場所に掲示されるとは限らない(県が作製して市町村に配布したが、そのまま倉庫に眠っていた例もある)。

「学校だより」や「保健だより」で、注意を喚起している自治体もあるが、安曇野市のように教育長が直々に保護者に要請すれば、保護者も重く受け止めるに違いない。