欧州は移民問題での内部対立のほか、ロシアや米国との緊張関係に気を取られている。その隙を突くように、中国は歴史的な好機に乗じて欧州の奥深くに入り込もうとしている。中国は、アジアやアフリカで積み上げてきた経験を元に、次々と中・東欧諸国との取引をまとめ、金融と通商の両輪でネットワークの構築を進めている。その狙いは国際秩序への挑戦だ。これまで中国は、欧州連合(EU)の周縁にある十数カ国に足場を築いてきた。この中には、ハンガリーのような比較的小規模なEU加盟国も入る。また、セルビアなどEU加盟準備を進めている国もある。中国の労働者らは、交通の難所だったモンテネグロの山地に50階建てビルに匹敵する高さの柱に支えられた高速道路を建設している。中国はギリシャのエーゲ海岸から極寒のバルト海沿岸ラトビアに至る新たな貿易ルートを形作ろうとしており、この高速道路も港湾や鉄道を含めたその新回廊の一部となる。