夫婦でうろたえ、嘆き悲しみ、ネットで検索して『日本ダウン症協会』の存在を知り、近くに住むダウン症の子どもがいる家族を紹介され、ダウン症について学び、ようやく事実を受け入れた。

「私、覚悟ができた。この子を守り、育てて行きます。『子どもは親を選んで生まれてくる』っていうじゃない。せっかく選んでくれたんだから、頑張らないと。皆で、幸せになるよ」

 前向きな言葉を聞かされてから3年余り。決してマメなほうではなかった友人は、子どもの誕生日や節句、お正月など、イベントがあるたびに家族写真を送ってくれるようになった。

 そして千晶さんは、2人目の子どもを妊娠した。予定日は、38歳の誕生日の1ヵ月半後。妊娠の有無を確認するために受診した、職場の近くの入院施設のないレディースクリニックの医師は言った。

「高齢出産ですね。出生前診断はどうしますか。高齢の方にはお勧めしているんで。次回までに考えてきてくださいね」

出生前診断を否定はしない
でも、もやもやしてしまう

 長男を出産したのは34歳の時。高齢出産といわれる35歳目前だったが、出生前診断の話はなかった。

 今回勧められたのは、以前はなかった新しいタイプの出生前診断だった。採血だけで済み、しかも感度が約99%と高い。

「以前は確か、最初に血液検査と超音波検査を組み合わせて診る『超音波マーカー検査』を受けて、気になることがあった場合だけ『羊水検査』を勧められたのよね。羊水検査は精度が高くて、ほぼ100%の確定診断ができるけど、子宮に針を刺すから、約300人に1人の割合で流産のリスクがあるって、何かで読んだ記憶がある」

 自分の記憶を確かめるように、夫の育夫さん(仮名・45歳)に説明した。

「新しいタイプの出生前診断は安全で簡単で、精度が高いんだね。そして赤ちゃんがダウン症で生まれてくる確率は、妊婦の年齢が上がるほど高くなる。それなら、診断を受けない理由はないんじゃないの」

 夫の言葉にうなずくが、どうしても、もやもやした気持ちが湧いてくる。