ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務していたカルロス・ゴーン氏と、日産の代表取締役のグレッグ・ケリー氏が、金融取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。日産自動車は臨時取締役会を開き、ゴーン氏の会長職解任を全会一致で決めた。一方、ルノーはティエリー・ボロレ氏を「暫定会長」としたが、ゴーン氏を当面会長職にとどめることを決め、日産とルノーの間で、ゴーン氏逮捕を巡る対応が分かれることになった。
日本のメディアは、ゴーン氏が逮捕の理由となった、2010年度から5年間の99億9800万円の役員報酬を49億8700万円と記述した有価証券報告書の虚偽記載に加えて、海外の高級マンションなど、さまざまな形で行われた毎年10億円程度の日産からの便宜供与を詳細に報じている。ルノーという外資と、ゴーン氏という外国人経営者に20年間に渡って支配された日産の「負」の側面が一挙に噴出しているようだ。
これに対して、この機会にルノーとの関係を清算し、日産・三菱の「日本の民族系資本」としての地位を回復すべきだという主張も出てきているようだ(現代ビジネス『反強欲・反グローバル資本主義という潮流で読み解くゴーン事件』)。だが、筆者はその主張に同意するつもりはない。
むしろ、日産のストーリーは「日本政府からも見捨てられていた会社が、外国のカネと経営者を受け入れ、技術力と勤勉さで立場を逆転し、外資を飲み込む世界屈指の企業グループを形成し、経営の主導権を取り戻した」という、「サクセスストーリー」として語られるべきであり、今後の日本企業と日本人が世界で生き残っていくための、1つの指針を与えているからだ。