写真:ユニフォトプレス

逮捕状の請求を受けた裁判官も、「被疑者の氏名」欄を見て度胆を抜かれたに違いない。日産自動車の経営再建の立役者であるカリスマ経営者、前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が19日、東京地検特捜部に逮捕された。昨今の特捜部は大阪地検が証拠改ざん事件を起こしたり、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書の改ざん問題では何も立件できなかったりと、捜査能力の低下と相まって信頼は失墜。関係者には「持ち込み(内部告発)で、よほど固い証拠を頂戴したのだろう」という冷ややかな見方もある。事実、日産側は特捜部と捜査協力の見返りに起訴を免れたり、罪を軽くしてもらう「司法取引」で合意していた。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

“やりたい放題”で余罪続々

 ゴーン容疑者は日産の有価証券報告書に自分の役員報酬を計約50億円少なく記載して申告したとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、右腕だった前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)とともに逮捕された。

 2人の逮捕容疑は2011年3月期~2015年3月期の5年間に計約99億9800万円の報酬を受け取っていたのに、計約49億8700万円と過少に記載した有報を財務省関東財務局に提出した疑い。

 特捜部は逮捕容疑とされた約50億円の内訳を明らかにしていないが、日産の株価に連動して報酬を受け取る権利(ストック・アプリシエーション権、SAR)による報酬数十億円分のほか、オランダの子会社から毎年受け取っていた数億円の報酬を記載していなかったとみられる。

 日産は19日、ゴーン容疑者の逮捕を受け「早急に企業統治上の問題点を洗い出す」との声明を発表。西川広人社長は同日夜、緊急記者会見し、内部通報をきっかけに数ヵ月前から社内調査を実施し、逮捕容疑となった有報の虚偽記載のほか、私的な目的での投資金支出、会社経費の不正支出が確認されたと発表した。