【おとなの漫画評vol.10】
『めしばな刑事タチバナ』
原作・坂戸佐兵衛、漫画・旅井とり
徳間書店
既刊31巻 2018年11月現在 徳間書店
世にグルメ漫画は数あれど、この作品ほどグルメからほど遠く、しかしわれら普通の市民にとってものすごく近い「食」をテーマにしている漫画はないだろう。
舞台はある所轄の警察署。中年刑事タチバナが主人公だ。通常、食の漫画の主人公が知識を披歴するのは素材、調理法、それに店の情報と相場は決まっているが、本作で登場するのはB級グルメどころか、C級にも入らないであろう安いチェーン店やジャンクフードである。開陳される知識は社会的な情勢や産業史に拡大されており、それが非常に面白いのだ。
タチバナ刑事が食の知識を開陳する「めしばな」の相手は同僚・上司の警察官であり、取り調べ対象の被疑者だったりする。
第1巻で、タチバナ刑事が本来は警視庁のエリートであり、何かが原因で所轄に異動されたことがわかる。なんだか『新宿鮫』の鮫島警部みたいだが、その後の展開でこの問題はどこかへ消えてしまっている。まあ、本筋のグルメとは全然、関係がないからだろう。
カップ焼きそば、ほか弁、ポテチ…
ジャンクフードのトリビアが満載
ジャンクフードに関する作者の造詣は深い。本作は「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)で2010年の年末から連載されており、もうすぐ8周年である。コミックスも31巻を数える。最新巻で取り上げられているテーマはこうだ。
・ソーセージパン
・クリームソーダ
・シーフード・ガンボ
・バナナプディング
・冷やしパン
・冷やしラーメン
・冷やしチョコレート菓子
・冷やし中華