一軒め酒場筆者は「おはよう日本」の番組収録の翌週、今度は東京・神田の「一軒め酒場」を訪れた

 NHKの朝の報道番組「おはよう日本」で、日本の物価が上がりにくい背景を外食産業の価格設定の観点から解説させてもらった(10月30日放送)。収録場所はスタジオではなく、東京・池袋の低価格居酒屋だった。

「B級グルメに詳しいエコノミスト」として紹介したいという話だった。それは何より大変ありがたい評価だが、念のため番組側には「言い間違えて『グルメに詳しいB級エコノミスト』とは紹介しないでくださいね」とお願いした。

 夕方4時半ごろに、安さで知られる「一軒め酒場」に到着した。店内はすでに酔ってハイテンションな大勢の客でにぎわっていた。看板メニューの「バクハイ」を記者と飲みつつインフレ目標達成の困難さを語るのだが、予想以上にチャレンジングな企画となった。この飲料は生ビールにウイスキーを加えたものであり、空腹時に飲むと酔いが急激に回るからだ。

 この「バクハイ」の狙いはまさに安く早く酔えることにある。8月11・18日合併号の本欄で、日本銀行本店近くの居酒屋で生ビールに焼酎を加えた飲料(590円)が人気と書いた。それと同じコンセプトだ。ただ、この「バクハイ」は290円とさらに安い。他のメニューを見ても、酎ハイやサワーが190円、串カツ99円、鶏レバーワイン煮180円、ちくわ磯辺揚げ190円と超低価格だ。午後6時ごろには満員状態だった。

 料理の質や客の入り方から考えると、もう数十円高くてもいいのではないかと思う人もいるだろう。しかし、値上げは容易ではないという。同業他社との競争は激烈で、かつコンビニで缶酎ハイやつまみを買う「家飲み」もライバルだからだ。番組では他に、いわゆる「せんべろ」の店(1000円でべろべろに酔える店)や、さらにその半額(500円)の「はんべろ」の店も取り上げられていた。