――データがお金と同じようなものとして扱われるとなったらそうでしょうね。表紙に「データは資産。信用は貨幣。そして『お金』は、あなたそのものとなる」と書かれていますね。

 お金の起源が「負債を記帳する」という行為にあるというのは最近よく語られる話なんだと思いますが、その点から言っても、お金は最初からデータなんですよ。加えて、歴史的にリアルな貨幣の時代を経てお金が電子的にやり取りされるようになってからはなおさら、――っていうのは『ビットコインはチグリス川を漂う』のデイビッド・バーチに言わせれば、ウェスタン・ユニオンっていうアメリカの電報の会社が電子送金を開始した1871年以降ってことなんですが――お金とアイデンティティの認証っていうのは切っても切り離せないものだったということもあって、お金、データ、そして取引者のアイデンティティというのは、ますますセットで考えなくてはならない一心同体のものになりつつあるんだと思います。

――なんで切り離せないんですか?

 だって、お金をやり取りするときに、誰が誰に払っているのかっていうのは最も重大な問題じゃないですか。詐欺というのは、基本、その自己同一性をハックしちゃうことなわけですよね。オレオレ詐欺とか(笑)。

――ははあ。なるほど。

 キャッシュレス化がどんどん進んでお金が「データ化」していく流れのなかで重要なのは、電子空間におけるアイデンティティが、ちゃんとリアル空間におけるアイデンティティと紐づいていることなんです。私が私であり、あなたがちゃんとあなたである、ということが信頼できるかたちで根拠付けられていないと、怖くてオンラインで、重要な何かを交換することなんてできないですよね。というわけで、バーチャルとリアルなアイデンティティが全面的に統合される必要が出てくるということになるわけなんですが、ちなみに、インドでは、この10年で12億人に、マイナンバーに類するものを振り当てて、その番号を虹彩・顔面・指紋認証でひとりひとりの個人に紐付けるということをしてきたそうなんです。

――ひええ。10年で12億人。しかも三段階の認証。日本は、その10分の1の人口でも四苦八苦してるのに。

 インドでは、それを実施するために「固有識別番号庁」っていう省庁をわざわざつくってやったらしいですから。