5月15日までに、3メガバンクグループの2018年3月期決算が出そろった。日本銀行の異次元金融緩和などで銀行の本業と呼べる融資業務が低迷。3メガの苦境ぶりが露呈する中、国内最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループは、熟慮の末に“未来”の銀行の姿を打ち出した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)
「大胆な構造変革に、スピード感を持って取り組まないといけないことが明確になった」
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の平野信行社長は、2018年3月期決算をこう総括した。言葉の端々に漂うのは、3年ぶりに当期純利益が増益に転じたことなど“眼中にない”と言わんばかりの緊迫感だ。
その理由は決算をひもとくと明らかだ。純利益は昨年比632億円増の9896億円と好調ながら、増益要因は、融資の貸し倒れに備えて事前に費用計上した引当金の戻り益や、株式の売却益など一過性のものにすぎない。
一方、持続的な収益モデルは陰りが見えている。とりわけ、日本銀行の異次元金融緩和などの影響で、本業の融資業務の低迷が著しい。融資による利益が大部分を占める資金利益は、傘下の三菱UFJ銀行で昨年比10%減となった。その結果、一般企業の売上総利益に当たる業務粗利益が、FG全体で同4%減の約3.8兆円、前述の一過性の利益が含まれない一般企業の営業利益に当たる業務純益は、同14%減の約1.2兆円とそれぞれ落ち込んだ。
業務粗利益の減益に伴い、経営の効率性を示す経費率(経費÷業務粗利益)が、過去最悪の水準だった昨年の64.6%から68.0%へとさらに悪化。中核子会社である商業銀行の不振が響き、高コスト体質を「変革」する必要性が浮き彫りになったというわけだ。
では、銀行はどう変わるべきなのか。昨年、3メガバンクグループが相次いで業務量削減策を打ち出し、その合計は3.2万人分に至った。三菱UFJFGも9500人分の業務量削減を掲げており、銀行の2大コストの一つである「ヒト」は整理が進んでいる。