いまだ鈍い賃上げ
カギを握る生産性向上

 設備投資以上に鈍いのが賃上げの動きだ。企業活動により生まれた「付加価値」の増加ペースほどに人件費が伸びず、人件費を付加価値で割った「労働分配率」はこの数年、低下傾向にある(図3)。

 景気回復の初期段階では企業業績の改善が先行し、賃上げは遅れるために労働分配率は下がるのが通例だ。そうはいっても歴史的な低失業率が続き、19年2月には景気拡大期が戦後最長となる局面にもかかわらず、賃上げが本格化しない現状からは、人件費の増加に慎重な企業の姿が浮かび上がる。

 賃上げの行方を占う上でも関心が集まるのは、付加価値を従業員数で割った「労働生産性」の動向だ(図4)。かつては70年に日本経営者団体連盟(日経連)が提唱した「生産性基準原理」なる考え方(昇給は生産性上昇の範囲内に抑える)で賃金交渉を行っていた。最近では、これを応用して付加価値などを基に自社の労働生産性をはじき、それを基準に人件費管理を行う企業も少なくない。

 その労働生産性は、直近年度で製造業が800万円台後半である一方、非製造業は約700万円と大きな開きがある。よって賃上げ本格化には、とりわけGDP(国内総生産)の7割を占めるサービス業の生産性の底上げが不可欠だ。

 もっとも足元では世界経済の変調を映すように輸出が鈍りつつあり、米中の経済摩擦をはじめ海外発の逆風が吹き付ける。こうした背景から18年度の下半期は上場企業が減益になるとの予想も多く、これまでのような増益シナリオが転換を迫られつつある。

 それでもこの数年に付けてきた力を生かし、積極的な投資や賃上げに踏み込めるのか、ニッポン株式会社は正念場を迎えている。この成否こそは、日本経済の行方を占う上でも最大のカギとなる。