実は、過去の先行研究でも、超・長時間労働が行われると、主観的幸福感がかすかに増えることは観察されていました(*2)。しかし、それらの研究では「十分な調査対象者が確保できないこともあり、そのせいで主観的幸福感がたまたま上がったのではないか」という結論が示唆されていました。しかし今回、十分な調査対象者を得ても、残業をかなり行っている層の主観的幸福感は微増することが確認できました。

(*2)大竹文雄、白石小百合、筒井義郎『日本の幸福度 格差・労働・家族』日本評論社、2010年

 超・長時間労働をしている層は、健康などを損なうリスクが生じているのにもかかわらず、つかの間の幸福感を他の層より強く抱いているのです。やはり、ここには、長時間労働によって人の認知に「ゆがみ」を生み出す何らかのメカニズムがあると考えるのが妥当かと思います。
 
 図表3‐2のグラフを見ると、会社への満足度や仕事へのエンゲージメントも、幸福感と同様に残業時間60時間以上で高まっています。「エンゲージメント」とは簡単に言えば、「仕事に向かう活力ある、いきいきとした心理状態」を示す言葉です。

超・長時間労働者のストレスは、
残業なしの層のほぼ2倍!

 超・長時間労働でも満足し、幸福で、やる気もある……。この人たちは長時間を仕事に費やしているものの、負担を感じないほど素晴らしい環境にいるために、心身ともに健康に働いているとでもいうのでしょうか? 労働時間は長いけれど、たまたま良い職場もあるということでしょうか?

 他のデータを見てみると、決してそうとも言い切れないようです。