最近、政府の統計データに関する不祥事が相次いで発覚している。これら統計調査はどのように実施されるのか、どうして不祥事が頻発しているのか。元官僚の筆者がその背景を解説する。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)。
統計に対する信頼が
揺らぎ始めている
「活かせ統計、未来の指針。」
これは10月18日の統計の日に合わせて、1万件弱の応募作品の中から選ばれた、本年度の「統計の日」の標語である。
ところが、その「未来の指針」となるはずの統計に対する信頼が揺らぎ始めている。その原因となっているのは、言うまでもない。ここ数年頻発している統計や調査を巡る不祥事である。
例えば、データ改ざんが発覚した経済産業省の「繊維流通統計」。平成28年12月、回答数を維持するために過去の調査によって得られたデータをそのまま数年に渡って使用していたという。
この統計は、この不祥事を受けて、「本統計調査が実態を反映した統計調査となっておらず、統計ニーズも小さくなっていたことから」廃止された。
また、平成25年度労働時間等総合実態調査。本年の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」、裁量労働制に拡大や、いわゆる高プロ制度を導入する法律案に関し、それを妥当とする根拠となった一般労働者および裁量労働制の労働者の労働時間に関するデータに異常値が見つかり、そうしたデータの撤回を余儀なくされた。
そして、毎月勤労統計。四半期別GDP速報(QE)の作成において基礎資料としても用いられながら、サンプルのうち30人以上の調査対象事業所(約2万事業所)の入替え方式を、2~3年ごとに新たに無作為抽出した事業所に総入替えしていたものを、1年ごとに順に3分の1ずつ入れ替える方式に変更したこと等により、現金給与総額の前年比増加率が過大となる結果を生んだとされている。