東京都では長年、「青少年・治安対策本部」が「ひきこもり支援」を担当してきたが、7月に都議や学識経験者、各行政機関だけでつくる協議会で意見具申されたのを契機に、都内の複数の当事者グループや家族会は「ひきこもりが犯罪者予備軍との印象を与える」として、担当を長期高齢化に即した福祉部署に移管するよう、小池百合子都知事に要望した。都議会でロビー活動を行うことも、初めてで手探りの経験だった。

 しかし、事態は動いた。小池知事は12月議会で、都議会公明党が「ひきこもり対策も青少年事業から8050問題が顕著となった昨今、見直しが求められる」と迫った代表質問に対し、「都庁の組織全体を再構築すべき時期に来ている」として、「迅速に解決すべき課題ついては、必要な体制をスピード感を持って構築していく」と答弁した。同本部長も、相談体制の年齢制限の撤廃を明言した。遅きに逸した感じだが、2020年五輪・パラリンピックを控えた首都・東京都で、当事者や家族が動いたことによって現実に即した支援の枠組みに変わろうとしていることは、全国への波及も大きいと言える。

平成の30年間を引きこもり
世の中の変化を知らない男性

 2018年は、そんな各地の当事者や家族から声をかけられ、行政への要望やロビー活動に同席する機会も増えた。12月、青森県庁で、要望に立ち会った際には、県内各地から当事者や家族が集まってきていて驚かされた。

 弘前市から駆け付けた神譲さん(51歳)は、これまで30年ほど引きこもってきて、周りがどんな世の中になっているのかさえわからなかった。

 高校卒業後、首都圏で働いていた。当時、会社の上司が、中学時代の担任に「こちらで頑張ってますよ」と伝えた。ところが、当時の担任は何を思ったのか、「中学時代、いじめに遭っていた」ことを上司に知らせた。上司は、その話を同僚たちに話し、同僚がよそよそしくなった。「いじめられていた」という噂は広まり、職場で孤立していった。

「何も悪いことしていないのに、なんで?」と思ったが、居づらくなり、人が怖くなった。

 神さんは、高校時代までいじめに遭ったものの頑張って通い続けた。母親がいつも家にいて、心配をかけたくなかった。自分の子どもがいじめられてると知ったら悲しむと思ったから、いじめられている素振りも見せずに通い続けた。