なお、中国経済の混乱が、リーマンショックのように世界経済を混乱させる可能性を懸念する向きもあろうが、それは杞憂に終わるだろう。第1に、米国は基軸通貨国だったから、米国の金融危機が世界の金融を混乱させたのであって、中国の人民元で何が起きても中国の国内問題に止まるからだ。

 第2に、米国の輸入は巨額だったため、米国経済の混乱が世界の輸出を激減させたが、中国の輸入は(対米輸出品の部品等を除けば)それほど大きくないので、中国の景気悪化が世界の輸出を激減させる事は考えにくいからだ。

戦後最長の景気拡大は
まだ続く

 戦後最長の景気拡大はリーマンショック前の73ヵ月だったが、今回の景気拡大は、まもなくこれを抜いて戦後最長となる見込みだ。

「そんなに長く景気拡大が続くはずがないから、景気はそろそろ後退するだろう」と考える読者がいるとすれば、“景気が時計を持っていない”ということに気づくべきだ。

 景気は、理由なく後退を始めることはない。そういう意味では、国内情勢を見る限り、景気が後退し始める可能性は低い。一方の海外については、不確定要素は少なくないが、最大の不確定要素である米中冷戦の影響も上記したように限定的なものだといえそうだ。

 理論的には、インフレ懸念が高まって日銀が金融引き締めを行うまで、あと数年間は景気拡大が続きそうだ。まあ、それまでの間に海外の景気が悪化して、輸出減による国内景気の後退が始まる可能性の方がはるかに高いと思われる。

 ところで、景気見通しは悲観論の方が面白い。さまざまなリスクシナリオを展開できるからだ。特に今年は、新たなリスク要因の種が数多く生まれ、株価も年末にかけて暴落したため、悲観論者の舌鋒は1年前と比較にならないほど鋭くなっている。

 マスコミも悲観論の方を好む。それは、悲観論を読みたがる読者の方が多いからだ。しかも、悲観論は外れても怒られない。外れた時は人々が幸せだからだ。

 一方で、楽観論者には「何も考えていない」と思われるリスクがある。さすがに筆者も、リスクの存在に気づいていないと思われるのはしゃくなので、次回はリスクシナリオについて書く予定だが、あくまでもメインシナリオは「強気」である。

 ちなみに、日本経済が少子高齢化による労働力不足で黄金時代を迎えるという点については、本連載バックナンバー「少子高齢化による労働力不足で始まった日本経済の『黄金時代』」を、また米中冷戦が日本経済に与える打撃が大きくない事については、「米輸入制限で貿易戦争勃発、日本が得られるかもしれない『漁夫の利』」をご参照いただければ幸いだ。