「キャビア並み」に高い日本産のコメ

 上海の消費市場に目を向けてみよう。上海はもはや「金持ちしか住めない街」とも言われるようになったが、こうした富裕層は日本産米に目を向けるのだろうか。日本食材店の経営者は「うちでは日本産米は売れません」ときっぱり。“台所事情”に詳しい日本人長期滞在者のコメントも興味深い。

「金持ちだからと言って、自宅で消費する食品に惜しみなくお金かけるわけではありません。むしろ、富裕層は外食にお金を回す可能性が高いですね。買い物するのも、台所に立って食事を作るのもお手伝いさんだとすると、いくらおいしいとはいえ、日本産米になかなか目が向けられない可能性があります」

 日本に留学経験がある上海在勤の女性もシビアだった。

「日本のお米と中国のお米、正直あまり差がないように思います。差があるとすれば、日本のお米は冷えてもおいしい、という点ですね。日本の米の市場拡大ですか? 中国人がおにぎりを食べるようになれば別ですが、難しいと思います」

 農林中金総合研究所の研究員は、「中国の消費者にとって日本産米の小売価格は“キャビア並み”」だとしつつ、次のようにコメントする。

「米の価格は1俵(60キロ)いくらで取引されます。日本の生産者レベルで1俵1万2000~1万4000円(玄米ベース)、それを精米し、中国向けに燻蒸し、輸送し、関税がかけられ、流通ルートに乗せれば、1俵8万円になってしまう。中国で日本産米は2キロパックで売られていますが、そうでないと(値が張って)売れないのです」

 他方、上海庶民が選ぶのは、1キロ5~6元(1元=約16円)程度のコメ。富裕層が買い求める良質米でも1キロ10~12元がせいぜいだが、中国で流通させようとする日本産米は1キロ約70~80元もする。コスパ意識の高い中国人消費者が、毎日の食生活に日本産米を好んで買うとは考えにくい。2007年からの10年を振り返っても、日本産米は一般家庭に浸透せず、あったとしても贈答用など「ハレの日需要」にとどまっている。

 前出の研究員は、「対外輸出は1万トン台で推移しますが、10万トンにもなれば日本のコメの需給にとっては(まとまった)ロットになります」と語る。しかし、対中輸出の日本産米は微々たる量でしかない。日本のコメの年間生産量は約800万トンで、そのうちの対中輸出が320トンとすれば、わずか0.004%を占めるにすぎない。