中国メディアに登場した日本企業の報道は、概ねプラス評価になっているものが多い。それが企業文化などになると、さらに評価する記事が増える。その実情や、日本企業の裏事情を知っている人間としては、時に赤面してしまうほど褒めまくりだ。
しかし、近年、日本企業を見る目は間違いなく厳しくなった。
例えば、「日本企業はよく『検討する』と約束するが、一向に決まらないし、行動も起こさない」「残業はよくするが、あまり成果を出せない」。日本企業を議論するとき、そんな評価が枕詞となっている。
最近の具体的な報道を見てみると、より明らかになる。
中国の有力メディア「21世紀経済報道」は、パナソニックの中国法人に容赦なくメスを入れた。
「松下家電廠一線員工調査実録 效益下滑人才難留」と題する報道記事は、中国沿海部にあるパナソニックの従業員を取材する形で、従業員の士気の低迷ぶりをあぶり出している。パナソニックよりも、旧社名である松下電器の方が親しまれているので、中国ではパナソニックのことを「松下」と呼ぶ。ここでも以下、松下と呼ぶことにする。
敷地面積3万5000m2を超える松下の工場が建てられたのは1990年代初め。当時、周囲は荒れた田畑で、バスさえ通っていなかった。そんな土地に松下は総額約30億円を投じて開発を進めた。
これは、松下が1990年代初めに中国市場で行った大型投資の一つだ。松下グループの創設者である松下幸之助が1979年と80年に中国を訪問した後、中国市場本格参入の幕が開いた。