なぜ、人は追い込まれると、実力以上の力を発揮できるのでしょうか? じつはこれは、脳内物質の分泌に理由があるのです。新著『人生うまくいく人の感情リセット術』を出版した精神科医の樺沢紫苑氏が、同書の中から、脳科学と心理学に基づき、人間の抱くモチベーションのメカニズムについて解き明かします。
「制限時間6ヵ月」で
億万長者になった男
ウィル・スミス主演の『幸せのちから』(2006年)という映画があります。
私の大好きな映画の1つで、特に、ビジネスマンに見てほしい映画としては、ベスト3に入るでしょう。
医療用機械のセールスマン、クリス・ガードナー(ウィル・スミス)は、成功して財をなそうと必死にセールスするものの、1台も売れないという厳しい現実に直面します。家賃も払えなくなり、妻は家から出ていってしまいます。
この「苦しい」現状を、なんとかしたい。「証券マンは稼げる」という話を聞いて、彼は証券会社のインターンシップに申し込みます。無事、採用されたものの、半年間は無給ということをあとで知らされます。
所持金は21ドル。貯金もなし。残された5歳の息子クリストファーを託児所に預け、昼はインターンシップをしつつ、夜は機械のセールス。やがて、家を追い出され、息子と2人住むところもなく、公衆トイレで一夜を明かすことに……。ついにはホームレスとなり、救護所に並んで食事をもらう最低の生活に転落します。