日々膨大な仕事をこなす一流のクリエイターは、どのように仕事を進めているのでしょうか?
くまモン、相鉄、Oisixなど、多くのプロジェクトを手がけるクリエイティブディレクター・水野学氏。水野氏が大切にする仕事の基本は、意外にも「段取り」とのこと。仕事を効率的かつ高いクオリティでやり遂げるためには、「段取り」が欠かせないといいます。
今回は「段取り」を考える上で欠かせない「締め切り」について。締め切りが明確でないと、逆算して段取りができません。では具体的に、どのように締め切りを設定すればいいのでしょうか。
これからの仕事の基本である、「段取り」の秘密を全公開したのが『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)。この連載では本書から一部を抜粋・再編集し特別公開します。<構成:須崎千春(WORDS)、編集部>
仕事は
「締め切りが完成」だ
グラフィックデザイナー・仲條正義さんに教わった、ぼくがずっと大切にしている言葉があります。それは「締め切りが完成」という言葉です。
「完成したから世の中に出すのではなく、締め切りがきたら世の中に出すべし」
いわゆる芸術家だったら締め切りはないかもしれませんが、社会の中で生きている以上、締め切りがかならずやってくる──。
そんなニュアンスだと思いますが、さすが大先輩だと心に響きました。
資生堂パーラー、カゴメ、パルコ。ひとつの時代を象徴するようなデザインを次々と生み出した仲條さんでさえ、締め切りをもとに仕事をしているのだから、自分もそれにならおうと思ったのです。
仕事には段取りが必要だとぼくは考えています。
(仕事に段取りが大切な理由については、第1回記事を参照ください)。
その段取りを考える上でとても大切なのが、仕事のゴールです。
仕事のゴールがどこにあるか。ゴールから逆算して、するべきことを洗い出す。それが段取りです。
締め切りが完成ならば、「一生懸命にがんばったけれど、できなかった」という言い訳も通用しなくなります。そう、目指すべきゴールは「締切日までに完成すること」となり、段取りも、そこから逆算して整えていくことになります。
たとえば「3月中に、新しい商品の企画案を3つ提出するように」と上司に言われたとして、3月31日になって「できなかった」というのはありえません。
3月31日の時点でできていた企画──たとえそれが「なんかわからないけど、とにかくむちゃくちゃ売れる商品!」としか書かれていない子どもみたいなメモだけだったとしても、
──それが自分の仕事の「完成形」であり、自分の実力の「すべて」と判断されるということです。
「時間があれば、もっといいものができた」という言い訳は通用しません。
とても厳しいことですが、「時間内にやりとげることも実力のうち」というシビアさが必要なのだと、ぼくは考えています。