「おっさん」と「若手」の溝が深まるのは同じ言葉を違う意味で使うからだPhoto by Yohei Kurihara

飲みニケーションは時代遅れ、強めに当たればすぐにパワハラ、ジョークのつもりがセクハラ──。関係構築を図りたいけど、若手とどう接したらいいか分からない…。そんな中間管理職の悲鳴が聞こえる中、新卒・転職市場は熾烈を極め、離職率の上昇は企業にとって死活問題となっている。「若手が働きたい会社」にするにはどうすればいいのか。産業医としてさまざまな企業の人事や労務の内幕を見てきた「ドクター大室正志」が、世のおじさんたちに「若手の処方箋」を提案する。

 今回は、自らの働き方を「ビュッフェキャリア」と称し、大手メーカーに勤めながら好きなこと、得意なことを好きなバランスで仕事にして、しなやかにキャリアを切り開く正能茉優氏を迎え、ミレニアル世代の価値観や仕事観を解明する。(取材・文:大矢幸世+YOSCA、企画編集/FIREBUG+武田鼎)

SNSで増殖する
キャリアの比較対象

大室正志(以下、大室) 企業勤めの中間管理職たちを見ていると、どうも若手との距離感をつかみかねている人が多いけど、そもそも「若手社員が働きたいと思える会社」ってどういうところだと思う?

正能茉優(以下、正能) 「どこの会社でどうなりたい」という感覚よりも、あくまで「主語は正能茉優」の人生を送りたいですね。同世代を見ても、社内での出世よりも、「自分の人生をどうするか」を大事にしている人が多いように感じます。会社って、自分の人生を構成する要素の1つでしかないと思うんです。家族や友人、趣味や行ってみたい場所のようなさまざまな要素があって、その中の1つとして「どこの会社に勤めて、どんな仕事をするか」ということがある。だから、自分の人生全体の価値基準の中で、心地よくフィットする働き方はそれぞれだと思うんです。

大室 「主語は正能」ってカッコいいですね(笑)。自分の基準はハッキリしてるんだ。

正能 カッコいいというか、自分の人生が大事なんです。基準は、あくまで結果論かな。なんとなく心地いい方を選んで、それが積み重なって、結果として自分の基準になっていく。別にこの世代だからといって、好きなことややりたいことが明確にあるわけではないかなと思います。